ゼロの使い魔 ハルケギニア南船北竜
第三十四話「叙爵」





 いつものように王都の竜牧場へと到着したリシャールは、十日ほどアーシャを預かって貰えるように交渉した。当然先払いであるが、それは構わない。叙爵に絡んで大きな借金を背負う予定だが、まだ当座の金には余裕がある。最初に王都に来た頃に比べれば、随分と楽になったものだ。竜便の依頼などもこなしたなあと思い返す。
 竜牧場の方には、使い魔なので自分の好きに飛んでいくこともあるが、構わないかと聞いてみた。流石に十日も放っておくのはアーシャにも申し訳ないのだが、今回の予定から言って仕方がない。しかしそれではアーシャも退屈だろうから、少しは自由行動でもさせてやりたいのだ。
 厩務員の方は慣れたもので、主人に呼ばれれば数リーグ先でも飛んでいきますからなと笑っていた。調教で使役される普通の竜と違い、使い魔の場合は構わないとのことだった。
 特に問題はないらしいので、アーシャには、王都の上空でなければ、ちょっとぐらいなら飛び回ってもいいよと話しておいた。
「時間があったらちゃんと会いに来るから、ごめんね」
「きゅー」
 アーシャの方も、リシャールが忙しいと言うことは理解してくれている。優しく首筋を撫でてから、竜牧場を後にした。

 到着したのが夕暮れ前ということもあって、王都はそれなりに賑やかさを増していた。仕事を終えた人々が、街に繰り出す時間である。
 リシャールは、祖父の屋敷に行く前にセギュール伯爵家に寄って、次兄のジャン・マチアスに会うことにした。
「おー、こっちに戻ってきていたのか。
 エルランジェのお祖父様から話は聞いたぞ。
 大したもんじゃないか」
「ありがとうございます、兄上」
「しかし、驚いたのは爵位よりも、婚約の方だな。
 いずれ爵位ぐらいはと思わせるお前だったから、そっちの方はそれほど驚きはしなかったさ。
 まあ、ちょっと早いとは思ったがな。
 それよりも、婚約の方は公爵家のお嬢様だって?
 父上とニコラお祖父様は、頭を抱えていたんじゃないか?」
 次兄は笑ってリシャールの肩を叩いた。
「そういえばお前、魅惑の妖精亭のジェシカ嬢ちゃんとも仲良かったよな?
 そっちは良かったのか?」
 相変わらず、そちらにも足繁く通っているらしい。
「ジェシカとは友達、でしょうかね。
 貴族のお嬢様を好きになったと言ったら、呆れられましたけど……。
 ああ、まだ魅惑の妖精亭には寄っていないんですよ。
 今日からはモリスお祖父さまの所に泊めて貰う予定ですし……」
「そうか、時間が合えばまた飲みに行きたいところなんだが、流石にお前も忙しいだろうしな。
 次回の楽しみにしておこうか」
「はい、兄上。
 今度は僕がご馳走しますから」
「おー、それは期待できそうだな」
 兄としては弟が元気そうなので、色々ある様だがまあいいかと思うことにした、というあたりだろうか。
 最後に無理はするなよと励まされ、またの再会を約したリシャールは祖父の屋敷へと向かった。

 祖父の屋敷に着いたリシャールは、挨拶もそこそこに、早速モリスと詳しい打ち合わせを始めた。
「まあ、一番大事なことは、叙爵の式に欠席せんことだがの。
 それでも幾らか面倒事もあるわい」
「はい、お祖父さま」
「とりあえずは挨拶廻りかのう。
 わしもついていってやるから安心せい」
「流石に右も左もわかりませんから、そのあたりはお祖父様頼りになります」
 貴族院も含めて宮廷貴族に知り合いがいるわけでもないから、リシャールとしても祖父に頼らざるを得ない。祖父の言うように面倒事ではあるが、避けて通れないこともわかる。特に、名目はともかくも実質は金で買う爵位であるから、このあたりを蔑ろにすると後で予想もしない厄介事を運んでくることは容易に想像できた。
 夢と希望に溢れた少年らしい挨拶でもして、好印象を持って貰うかと、内心でため息をつく。
「うむ、任せよ。
 叙爵式は先に言うた通りに、来月頭のフレイヤの週のラーグの曜日が予定されておる。
 ……が、その前の虚無の曜日を除いた三日は挨拶廻りで忙しくなるからの。
 そのように心得ておけ」
「はい、お祖父様。
 それで、気になっていたのですが、僕は全部でどのぐらいの借金を背負うことになりそうでしょうか?」
 領地の値段自体は、最初にアルチュールから見せられた紙片に書いてあったので知っているが、貴族院工作にかかった費用など方は、リシャールにはまったく知らされていない。
 ちなみに港町のあるラマディエの方は十六万エキュー、鉱山を有するシュレベ−ルが十一万エキューで、この時点で最低限二十七万エキューの借金が確定していた。後は叙爵に直接関連する費用の方だったが……。
「そうじゃったな。
 領地の値段は先の通りじゃが、それ以外が大凡で四万エキューほどかのう。
 やはりヴァリエール公の一筆が効いたわい。
 アルの奴も最初、少なくとも十万エキューは必要になると言うておったからの、大した一筆になったわ」
 祖父の話では、賄賂も配るには配ったが、最初から無理を通そうとして相手に対したのではなく、ヴァリエール公の一筆を示してこういう予定になっているのでよろしく頼むという話にしたので、それぞれに渡す額は心付け程度で済んだのだそうだ。
 貴族院の議員にしてみれば、リシャールが叙爵しようがすまいが自分の腹が痛むわけではない。また、ヴァリエール公に対してのやっかみや対抗心はあったとしても、尻馬に乗るならばともかくも、自らが反意を示す口火を切るような愚かな真似は出来ない。その上で、リシャールの叙爵に賛成すれば多少なりとも懐が潤うのであるから、比較的円満に話が進んだのである。要は、ごねて得になるようなことがない話だったから、議員達も安い心付けで了承したのだ。
 もっとも、貴族への心付けであるから、安いと言っても一口千エキューあたりだろうか。ああ、亜人斬り一本分かと気楽に言えるものではない。
「まあ、舅殿には大いに感謝しておくことじゃな」
「もちろんです」
 公爵の手紙一通は、六万エキュー以上の価値になったということだ。リシャールにとっては、ありがたいどころの話ではない。
 こうして、最終的には領地の代金に工作費用の四万エキューを合わせて、合計三十一万エキューの借財で押さえられた。ここに利子が加わるので五十万エキューといったあたりだろうか。最初の口振りでは無利子で貸してくれるような話ではあったが、流石にそれでは申し訳なさすぎるので断った。このことで絶対に祖父らを損させてはいけないし、立派な姿も見せたい。無理は出来ないにしろ、幾らかでも利子を増やして返したいところであった。
「まあ、今月のうちは、わしがみっちりと社交界や領地の経営について教え込んでやるから覚悟せい。
 その為にの、こちらへは早めに来るように言うたんじゃ。
 耳の痛い話もするが、避けて通るでないぞ。
 大事なことじゃからの」
「重ねて御礼申し上げます、お祖父さま」
 リシャールは丁寧に頭を下げた。

 翌日からは、ほぼ一日中、祖父を教師にした座学と相成った。祖母とは食事の時に顔を合わせるぐらいであったが、領主の妻となって長いだけに、その重要さには察するところがあるのか、少々寂しそうにしながらも口に出しては何も言わなかった。
 祖父の講義の内容は多岐に及んだが、徴税や経営についてはともかくも、領内での裁判権の行使や、王国から封建領主に課せられる賦役については、リシャールもほぼ一からの勉強となった。
 封建領は実質的には小さな王国であり、封建領主は独裁者でもあるのだ。リシャールにしても、絶対的な権力者など、今はともかくも、前世では歴史かフィクションかテレビのニュースでもないと、目にすることなどほぼなかったような存在である。
 現代でも、ワンマン社長が独裁者などと揶揄されることがあるが、そんなものとは比べ物にならない。ワンマン社長では気に入らない社員を解雇には出来ても死罪には出来ないが、領主にはそれが可能であり、慣習法によってそれが裏打ちされてもいる。ハルケギニアは、未だに無礼打ちがまかり通る世界なのだ。多少は批判の種になっても、後からでもそれなりの理由をつければ、特に気にする必要のない程度のことと済まされてしまう。
 リシャールは、自身の増長には特に気を付けなければならないなと、心に深く刻み込んだ。
 そして同時に、可能ならば領内で鉄工業を育てた後に、最終製品、つまり銃や大砲までの生産を目指すことに決めた。甘い考えではいられなくなった、自身への決意の表明でもあった。

 明けてフェオの月、フレイアの週。
 月の初日である虚無の曜日は一日休息を取ることとしたが、翌日からは忙しい上に緊張の連続だった。虚無の曜日にアーシャに会いに行けたのは、幸いだ。
 毎日毎日、祖父に連れられ何某侯爵やら誰某伯爵の元へと挨拶に伺う。気疲れもするが、揃いも揃って値踏みをするような視線を送られることが苦痛だった。
「なんのなんの。
 これぐらい、まだまだ序の口じゃぞ」
「はい、お祖父様」
 領地に引きこもって王都にはほぼ顔を出さない領主も多いと言うが、その気持ちは十分理解できた。一方で、雇った代官に領地を一任して、自分は王都で悠々自適、もしくは封建領主でありながらも宮廷貴族としてと振る舞うといった領主もいるから、これはこれでバランスが取れているのだろう。祖父の場合は、息子の防波堤とい意味合いと悠々自適が半々、と言ったあたりだろうか。
 ともかくも叙爵式までの三日間は、気が重いながらも忙しく、それでいて得る物も少ないという三日間になった。
 
 そしてラーグの曜日、ついに叙爵である。祖母に見送られ、リシャールは晴れて登城した。
 叙爵やその他の論功行賞も含め、急ぎでない式典や叙勲は、大体翌月の頭の数日間にまとめて行われるのだそうだ。
 緊張はするが、昨日までの陰鬱な日々に比べればかなりましという、ある意味解放された気分で式に臨んだリシャールだった。これが終われば、正式に男爵として立つことが出来るのだ。
 謁見に指定されたのは、さほど大きくない広間であった。それでも段の間と玉座が配された、それなりに立派な部屋である。それほど大きくない規模の公式行事に使う部屋だと、後から聞かされた。
 祖父の他にも、謁見の間には後見としてのギーヴァルシュ侯、アルトワ伯も共にあり、更にはヴァリエール公や、先日挨拶に行った貴族院議員のうちの、幾人かの姿も見える。
 流石にこの部屋では、公爵の元へも他の貴族達にも挨拶に行くわけにも行かず、軽い会釈に留めた。
 皆無言であったが、そこまで重苦しい雰囲気はない。リシャールの緊張はともかくも、この場で行われるのは決まり切った平時の一行事に過ぎないのだ。
 ただし行事を取り仕切る王家の側に、一つだけ変化があった。
 当初聞かされた式次第では、王后マリアンヌから叙爵を受ける予定であったが、そろそろ王女であるアンリエッタ姫にも経験を積ませたいという意向があり、リシャールの叙爵はアンリエッタによって行われることに決まった。リシャールが歳若く、彼女と同い年であるということも影響している。
 リシャールにも、もちろん異存はない。トリステインの花とまで謳われるアンリエッタ姫だ。その姫殿下が最初に執り行う叙爵式とあれば、この上ない名誉である。今はともかくも、後々若干の実利さえ伴う可能性もあった。
 そのようにつらつらと考え事をしていたリシャールだったが、王后陛下並びに姫殿下御入来との先触れを聞き、姿勢を正した。
 リシャールも含め、全員が深く一礼して王家の二人を謁見の間に迎えた。
 玉座は空けて、その左右に配された王妃と姫に為の座に二人が着く。先王の崩御以来、トリステインの玉座は空位であった。
「面を上げなさい。
 本日の要件をこれに」
 もちろん、そう口にしたマリアンヌ王后も内容は十分に知っている。これは、古い歴史と格式に基づいたトリステインの流儀なのだ。
 進行役の貴族院議員が、やはり伝統に従って古風な献言を行う。
「これなる臣リシャール・ド・セルフィーユ、功著しく信賞必罰に鑑みて、臣一同爵位の授与に賛同せしむものなり。
 主上の御意向や如何に、御伺い致したく候。
 臣リシャール・ド・セルフィーユ、前に」
「はっ!」
 当然ながらリシャールは著しい功績などは上げていなかったが、これも方便なのである。
 返事をしたリシャールは、数歩歩み出て壇上手前の赤絨毯で跪く。
 それを見届けてから、アンリエッタが錫杖を手にして壇上から降りた。
 リシャールも緊張していたが、アンリエッタ姫もやはり緊張しているようだ。小さく二度、深呼吸するのが聞こえた。
 それでも型通りに、リシャールの肩に錫杖が当てられる。錫杖は少し震えていた。

「我、トリステイン王が代理たる一子アンリエッタ、この者に祝福と貴族たる資格を与えんとす。
 汝リシャール・ド・セルフィーユ、トリステインの新たなる藩屏として、始祖と我と祖国に、子々孫々変わらぬ忠誠を誓うか?」

「誓います」

「よろしい。
 始祖ブリミルの御名において、汝を男爵に叙する。
 汝に始祖の加護と祝福あれ」

 言葉の締めくくりと共に錫杖が肩を離れたが、リシャールは跪いたまま、深く頭を垂れて姫の御言葉に返事はしなかった。そのように決まっているのである。
 続いて侍従がセルフィーユ男爵家の紋章の入ったマントをアンリエッタに手渡し、彼女がリシャールの肩にそれをまとわせる。これでようやく、セルフィーユ男爵の出来上がりとなった。態度には出せないので、内心でひと息をつくに留める。
 姫殿下の着席を待ってからリシャールは立ち上がり、元の場所へと戻った。
 やがて、進行役の貴族院議員とマリアンヌ王后の型通りのやりとりの後、王家の二人が退出して無事に儀式は終了となった。
 その後、列席した貴族院議員らもリシャールが挨拶をして礼を示すと三々五々散っていき、ようやく身内のみとなって一息をつく。これで一つ、肩の荷が下りた。
「皆様、ありがとうございました」
「うむ、立派じゃったぞリシャール、いやさセルフィーユ男爵」
「お主にはこれからも期待しておる」
 それぞれに祝いの言葉を掛けられていたリシャールだたが、侍従が彼を呼びに来た。
「アンリエッタ姫殿下が、セルフィーユ男爵をお召しで御座います」
「すぐにお伺いします」
「では、こちらへ」
 もちろんアンリエッタ姫とは先の叙爵式以外での面識はないが、断るわけにも行かない。祖父らにも目で聞いてみたが、首を傾げられた。
 ヴァリエール公は少しだけ思案していたようだが、リシャールに声を掛けた。
「リシャールよ」
「はい、公爵様」
「姫殿下も初の叙爵の儀と言うことで、直々にお言葉を掛けて下さるのだろう。
 礼節と忠義を心がけて堂々としておればよい」
「ありがとうございます。
 では皆様、失礼いたします」
 リシャールは侍従に案内され、王城奥へと進んでいった。

 こちらですと連れて行かれた先は、見晴らしの良いテラスだった。
 アンリエッタ姫の他に、なぜかルイズもいる。だが、疑問に思うより先に礼をしなくてはならない。
「姫殿下におかれましてはご機嫌麗しゅう……」
「リシャール、呼んだのはわたしよ」
 あろうことか、ルイズはリシャールの挨拶を遮ってしまった。ルイズは姫殿下と仲が良いようだし、リシャールに対しては身内という意識もあるのだろうが、リシャールの心中は穏やかではない。
 宮中の序列に従えば、ルイズは公爵の娘ではあるが無爵無領の貴族、一方リシャールは男爵家の当主で、この場合はリシャールの方が格上となる。慣習上は敬意を払うべき相手ではあっても、ここは宮中で姫殿下の御前でもあった。リシャールは、ルイズにお咎めがないかと肝を冷やしたのだ。
 しかしルイズ同様、アンリエッタも意に介していないようだった。どうやら大丈夫らしいと胸をなで下ろす。
「セルフィーユ男爵、こちらにいらして」
「は、はい、直ちに」
 リシャールは歩みを進めた。こうなった以上、流れに任せてしまう方が良いのだろう。
 どうぞと席を勧められ、困惑のままに着席した。
 改めて、アンリエッタを見る。確かにリシャールと同い年ぐらいの、美しい姫君であった。
「姫様は先ほどもお会いになったでしょうけど、改めてご紹介しますわ。
 ちいねえさまの婚約者、リシャールです」
「カトレア殿の婚約者と聞いて、是非お話をお伺いしたかったのよ、セルフィーユ男爵」
「は、はあ……」
 どうも貴顕の姫様方は、リシャールの思考の斜め上を進んでおられるらしい。叙爵がどうのという話題ではなかったようだ。それらは、先ほどは少々緊張しましたわの一言で片付けられてしまった。
「その時、ちいねえさまはとても嬉しそうでしたわ、姫様」
「まあ、それで、カトレア殿はなんと返事をされたのです?」
「はい、カトレア様は……」
 その日、リシャールは二人からの質問責めに、カトレアとの馴れ初めから結婚を望むに至った道筋までの全てを告白させられた。同じ年頃とあって、ルイズはともかくアンリエッタの方も気楽なようだった。思春期の年頃だ、その手の話題には興味津々であるのだろう。
 恥ずかしくとも嘘はつけぬし、相手は王家の姫殿下と、義理の妹とは言え公爵家の御令嬢である。リシャールにとってはとんだ精神的拷問であったが、二人共に、カトレアの快復や婚約の事は心から喜んでいることも感じ取った。叙爵の直後に恥ずかしい告白をさせられたことも、粗相や不忠のお咎めでなかっただけでもよしとせざるを得ない。
 また、良いこともあった。
 帰り際にはアンリエッタから名を呼ぶことさえ許されていたし、リシャールの方も、話の途中からはセルフィーユ男爵ではなくリシャールと呼ばれ、また遊びに来るようにとのお言葉まで戴いた。姫殿下の心象が良くなったのは間違いないだろうが、話の内容が内容なだけに少々釈然としない。それでも、これはルイズがプレゼントしてくれた叙爵のお祝いかなと、前向きに考えておくことにした。

 昼前になったが、ルイズはもうしばらく姫殿下と共にくつろぐということで、リシャールは半ば逃げ出すようにしてテラスを退出した。腹の探り合いも政治的な話題もなく和気藹々とした雰囲気であったが、別の意味で大変疲れたリシャールである。
 祖父らに合流しようとしたが、別室で談笑した後に、リシャールがいつ戻るかも分からないとあって、既に解散して城を辞してしまったと聞かされた。頼めば馬車ぐらいは借りられるだろうが、リシャールは王城からは徒歩で帰ることにした。
 廊下を歩いていても、マントの効果か、衛兵や侍従侍女らの礼も少し丁寧になっている気がする。
 慣れるまで、またしばらくは気持ちの落ち着かない生活になるなあと考えながら、リシャールは王城を後にした。







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