ゼロの使い魔 ハルケギニア南船北竜
第二十一話「年の瀬」




 明けてウィンの月、ハルケギニアの暦では十二番目の月となるその年最後の月のこと。
 リシャールは再びエルランジェの城を訪問し、祖父や叔父らと挨拶を交わしていた。
「お祖父様もお戻りになられていたのですか?」
「うむ、竜籠をすっとばして戻ってきたわい。
 楽しみじゃったからのう」
「リシャール、担当の二人もかなり頑張ってくれていてな、おかげで今では、ワイン蔵なのにワインの方が肩身が狭いそうだ」
「お二人はすごく乗り気でしたからね。
 とても楽しみですよ、叔父上」
 試飲の為に用意された部屋に場所を移し、三人で評価を付けていく。料理長や酒場の主人、領内の商人なども別室に呼ばれ、同じように評価を付けることになっていた。
「しかし……酷い味の物も多いのう」
「はい、代わりに使った材料からは想像もできないほど美味しいものもありますよ?」
「ほう。
 ……うむ、これはそこそこ美味いな」
「父上、これなどはいかがでしょう?
 肉料理に合わせるには丁度よいかと」
「漬け込む物によっては、香味酒としてよりも薬酒として売った方がよいものもありますね」
「そうだね。
 味はともかく、元の材料の効能をよく引き出せているならその方がいいだろうな」
 僅かずつ試飲しながら三人で話し合い、暫定的にムラサキヨモギ、桃りんご、ビール麦を選んだ。
 これらと別室での結果を合わせて、今度はもう少し大がかりにして樽と壷で仕込む予定である。また、一部の試作香味酒については担当の二人と相談して、このまま翌月まで漬け込む物と、新たに漬けて早い段階で材料を取り出す物なども決めて、試作を続けることになった。
 今の段階では概ね上手く行っているようで、一安心のリシャールである。

 試飲会が終わった後、どうやら物になりそうだと言うことで流通まで視野に入れた話し合いが行われたが、リシャールはエルランジェの香味酒には関わらないということにして貰った。
 とてもこちらまでは手が回らない、というのが正直なところだった。発案はリシャールだったにせよ、ラ・クラルテ商会は彼を含めても四人しかおらず、荷馬車一台持っていなかったからである。エルランジェに支店を出そうにも人がいない上に、王都やその他の地域に流通経路を持っているわけでもなかったから、少々もったいないとは思いつつも辞退した。
 製造も流通も、エルランジェ領内の職人や商人に任せることになるだろう。
「そうじゃリシャール、お主は降臨祭の時期はどうするのじゃ?
 アルトワに戻るのか?」
「いえ、まだ予定が立たないんです。
 加工場も年内一杯は動いてますし、錬金鍛冶の方もありますから……」
 ハルケギニアでは年始の十日間を降誕祭として祝い、人々は休暇を楽しむのだが、ギーヴァルシュからだと、アルトワまでは馬を早駆けさせるならともかくも、普通に歩かせれば五日余りなのだ。アーシャでも片道一日半の距離になってしまう。加工場の大掃除や年始からの稼働に備えての準備なども考えると、アルトワには三日も滞在できればいい方なのである。
「忙しないのう」
「いま放り出したら色々と大変なことになりますので」
「無理はするんじゃないぞ」
「はい、ありがとうございます」
 予定が決まっていないなら皆で遊びに行くのもいいかもしれないなと、リシャールは考えていた。

 結局、エルランジェには一日余計に滞在してしまった。酒が抜けきらなかったのだ。調子に乗って飲み過ぎたらしい。体がまだ大人ではない、と言うことはすっぽりと頭から抜け落ちていた。
 丸一日掛けて酒を抜き、それでもまだぐったりとしながらアーシャに乗ってギーヴァルシュに帰ってきたリシャールの元に、珍しく父クリスチャンからの手紙が届いていた。早速封を切って見る。
「へえ……」
 手紙には、ミシュリーヌの兄には魔法の才があって現在こちらでも教え込んでいるところだが、ミシュリーヌにも魔法が使える可能性があるから初歩を教えてみてはどうか、と書かれていた。本人がどう思うか少し心配だったが、とりあえず呼んで話をしてみることにする。
「えっ!?
 魔法、ですか?」
「うん。
 お兄さんは使えるみたいだから、ミシュリーヌにも使えるんじゃないかもって、手紙が来たんだよ」
「考えたこともなかったです……」
 両親に魔法の片鱗さえ見られなくとも、魔法が使える平民は実際にいる。明確に貴族の血脈ではなくとも、先祖の誰かが貴族でさえあれば、可能性は低いながらも魔法を使える場合はある。基本的には王家に近い位置にある血筋ほど強力な魔法の使い手になる可能性が高いが、ラ・クラルテ家のように、貴族としては末端に位置する家系でも、十分に力のある魔法使いが出てくる場合もあった。平民にも、身持ちを崩した貴族から後落胤、または惚れた相手と添うために自ら貴族であることを辞する者など、様々な形で貴族の血脈は入り込んでいた。
 リシャールは、魔法の発露には遺伝が関係しているようだが血液型のように明確なものではなく、本人の努力や環境にもかなりの影響を受けるのではないかと考えていた。
 競争馬の早い遅いみたいなものだろうか。両親や先祖が早ければ早い可能性がかなり高いが絶対に早いとは限らないし、得意な距離もそれを必ず受け継ぐとは限らない。リシャールはなんとなくそういったイメージで魔法を捉えていた。
「それでね、しばらくこれを肌身離さず持っていて欲しいんだ」
「杖、ですか?」
 リシャールは、自分が予備に持っている短杖と同じ様な、細くて短い杖をミシュリーヌに手渡した。
「うん、さっき作った。
 練習用の短杖だから、そんなに邪魔にはならないと思う。
 普段は腰に差しておけばいいかなあ。
 僕の軍杖みたいに大きくないから、寝るときは紐で腕にでも軽く結わえておくと、邪魔にならなくていいよ。
 僕は抱いて寝たけどね」
 軍用の鉄杖は、それなりの大きさと重さがあったから、仕方ないのだ。
「はい、わ、わかりました」
 流石にミシュリーヌの方はおっかなびっくりである。
「まあ、気楽に、ね?
 お兄さんが使えても、ミシュリーヌが使えると決まったわけじゃないから、使えれば幸運、ぐらいの軽い気持ちでいよう」
「は、はい」
 早速、杖との契約をさせる。……と言っても、この段階では気持ちを込めながら型通りに言葉を重ねるだけで、ミシュリーヌにも杖にも変化は見られない。
 杖を馴染ませるのには、しばらくかかる。慌てるものでもないし、多少なりとも使えるならば幸運、というあたりだろうか。
 素質も系統もまだわからないが、ミシュリーヌが魔法を使えると少しは楽が出来るかなあと、リシャールは皮算用するのだった。

 一週間後の朝、加工場の空き地の真ん中で、リシャールはミシュリーヌと向かい合っていた。短杖の方も、魔力の宿り具合は確かめてある。これなら大丈夫そうだ。
「あー、そんなに緊張しなくても大丈夫だよ」
「は、はい」
 まずは、と短く呪文を唱えてさっき拾ってきた巻き貝の貝殻に魔法をかけて宙に浮かばせた。
「これが、レビテーション。
 物を浮かせる呪文だよ。
 一番初歩の呪文になるかなあ。
 見て判りやすいし、小さな物を持ち上げるだけなら、あまり強い力も使わない。
 まあ、荷物の積み卸しの時なんかに見慣れてるとは思うけど……」
 リシャールは貝殻をそっと地面に戻して、ミシュリーヌの方に向き直る。
「やり方は難しくない……って言われても勝手が分からないだろうから、僕の言うとおりに頭の中で考えてみてね」
「はい、リシャールさん」
「最初は心構えかなあ。
 出来る出来ると思い込みすぎてもいけないし、簡単な事だと気を抜きすぎてもいけない。
 でも、ミシュリーヌが魔法を使えるのは自然なこと、という風に考えてみよう」
「はい」
「それで実際に魔法を使うときだけど、杖先に気持ちを集中させて、身体の中の魔力がそこに集まってくる、って想像しながら呪文を唱えるといいかな。
 最初は実感出来ないと思うから、形だけを練習してみよう。
 それに慣れてきてから、気持ちを集中させて実際にやってみることにしようか」
「はい、頑張ります!」
 結果的に言えば、ミシュリーヌは一時間ほどの練習を経て、レビテーションの呪文を使えるようになった。もちろん初めて魔力を使ったために、数回唱えただけでかなりの疲れが見えたので、リシャールはそこで練習をうち切り、夕食まで休ませることにした。
 
 彼女はまだ、どの系統魔法を使えるかや、どの程度の才能があるのかまではわからない。それでも魔法が使えることは確認できたので、リシャールにも本人にも負担がないように教えていけばいい。
 また、リシャール自身もしばらく訓練などしていなかったなと、反省する。魔法自体は日常的に使う頻度がかなり増えたのでそこまで嘆くようなものでもないのだが、錬金鍛冶にも、もう少し力を入れた方がいいのかもしれないなと思った。壷を焼き物工房に割り振れた分、余裕は出来たはずだ。
 今度は大きさをそこそこにした、片手剣の『亜人斬り』を作ってみようと考えたリシャールだった。バランスを取るのにまた時間を食うだろうが、一度形にしてしまえば二回目からはかなり時間が短縮できるだろう。またセルジュに、上物の鉄塊と炭を発注しておくことにしよう。
 しかし、もう今年もあと半月ほどである。これらは来年の課題になりそうだった。
 年末も近いので、加工場休止の準備やマルグリットらの休暇にも気を配らないといけない。夕食の時にでも本人達に相談してみようということにして、リシャールは鍛冶場に向かうのだった。

「え、休暇を貰ってもよろしいのですか?」
「うん」
 リシャールの提案に三人は目を丸くしていた。リシャールの方が、何故にと驚いたほどである。リシャールにしてみれば、アルトワの城でも従者やメイド達は交代で休暇を取っていたし、加工場自体を休みにするのだから問題ないつもりだった。リシャール自身も世話人を必要とするような貴族のお坊ちゃんではないから、付き人もいらない。
 ハルキゲニアの常識ならば、奉公人が降誕祭の休暇を丸々与えられることはまずないと言っていい。しかしリシャールは、前世では自分はサービス業だったから休みはそれこそなかったが、工場勤務の友人達などは呆れるほどの長期休暇を貰うことも多かったので、ちょっと羨ましかったのだ。自分も休みを取りたかったから、と言い換えても良いかも知れない。
「私は、手紙もちょくちょく送っていますし……ヴァレリーさんは?」
「えーっと、私も夫が亡くなってからは一人暮らしでしたし、親しい人といっても年末年始でお忙しいでしょうから、特には……ミシュリーヌちゃんは?」
「私もお手紙を貰ったところなので、寂しくないです」
 三人ともに、どちらでもいいようだった。割と蛋白だなあとリシャールは思ったが、家を出るということに関して言えば、リシャールの想像以上に彼女達は覚悟をしているのだ。ここの環境が恵まれすぎているせいでもあったが、リシャールはこちらにも気付いてはいない。風呂一つとってもそうだが、彼は自分が暮らしやすいようにしているだけなのだ。
「あー……。
 いっそ、ラ・ロシェールにでも泊まりがけで遊びに行きますか?」
 その場の思いつきであったが、リシャールは聞いてみた。
 三人が顔を見合わせ、マルグリットが代表して返事をする。
「いいんですか?」
「えーっと、僕が言うのも何ですが、十日間も仕事もなしにここでぼーっとしているよりかは、余程いいと思いますよ」
「それはまあ……」
「ラ・ロシェールには行ったことがありませんから、ちょっと行ってみたいと思いますわ」
「私もいいんですか?」
「もちろんミシュリーヌもだよ。
 たまにはね、仕事も忘れましょう。
 皆さんにはいつも頑張って貰ってますから、そのお礼と言うことで代金は全部僕が持ちます。
 ああ、もちろん旅行は強制じゃありませんけど」
「行きます」
「行きたいですわ」
「わたしも!」
 三人は即答した。
「じゃあ、決まりと言うことで。
 次に剣を売りに行くときにでも、予約を取っておきますよ」
「はい、お願いします」
「楽しみですわね」
「はい!」
 年末は旅行、ということに決まった。
 本当なら温泉地にでも行ければなあと思ったリシャールだったが、生憎こちらではそのような習慣はない。ガリアの火竜山脈にならば火山があるから、温泉宿は無理でも温泉そのものはありそうだったが、そこまで行くつもりは流石になかった。

 年末まではマルグリットには経営を、ヴァレリーには加工場を半ば任せつつ、ミシュリーヌに魔法の手ほどきをしたり鍛冶場に篭もったりしていたリシャールだったが、再び王都の祖父から手紙が届いた。
 年始に第一陣の香味酒が売り出されることになったのでお主も立ち会え、との事だった。前準備さえ出来れば、ギーヴァルシュを離れても良い状況にはなっている。リシャールは是非お伺いしたいと思いますと、返事を送っておいた。

 ああ、年末だなあとため息をついてみる。
 書類束を片づけながらふとこの一年を振り返れば、リシャールにとっては大きく生活が様変わりした一年となった。
 アーシャとの出会いも含め、周囲も大きく変わったし、今はまだまだ小さいとは言え、ラ・クラルテ商会の会頭と名乗っても恥ずかしいとは思わない。流石にもう行商人ではないと、胸を張って言えるだろう。
 加工場の方も引っ越し以来増築を重ね、昼間は二十人近くの人数を雇い入れている。今月の売り上げは二千エキューに達しそうな勢いになっていた。黒字はほぼ確定している。
 錬金鍛冶の方も順風といえる。『亜人斬り』の六千エキューを含め、今年の売上高は八千エキュー少しになった。三割の税は来年早々に払わなくてはならないが、アルトワの皆にも十分に顔向け出来る。
 魔法で金を稼ぐ、というのはリシャールの中にある元日本人の視点からしてみれば、とてもずるい手ではあるのだが、それだけに非常に有効であった。貴族が商売に手を出すのは褒められたことではない、とされているトリステインの常識は、実に理に適ったものであるのかもしれない。
 表向きはともかくも、侯爵家、伯爵家と言った名家の紋章や名を許された、いわゆる政商もいないわけではない。リシャールもギーヴァルシュ侯のお墨付きは貰っていたが、彼らは魔法の力ではなく政治的影響力を商売に活かしていたから、ラ・クラルテ商会とは根本的に異なる。商人に雇われる魔法の使い手ももちろんいるが、彼らは経営者ではない。少なくともリシャールは、魔法使いや貴族が、治癒や工事、錬金あるいは軍人などの仕事をすることはともかく、魔法そのものではなく、魔法を利用した商いを主軸にして生活しているというのは聞いたことがなかった。

 普通はここで横槍が入るなり、貴族の社交的な意味において悪い噂の一つも立って然るべきところだったが、リシャールの場合はいくつかのことが幸いしてそれらが押さえられていた。
 まず一つは、ラ・クラルテの名前である。アルトワで重責を担う一族であるという事は、アルトワではともかくトリステインで広く知られている物ではない。しかしアルトワのことを少なからず知る者ならば、それがアルトワ伯の息のかかった商会であることは一目瞭然なのだった。好を結ぶならばともかく、不用意に手を出すようなものではない。アルトワが貿易都市であることもそれを後押しした。
 次にリシャール自身の立場である。下級貴族の三男坊であるというのは、家を継がずに一人立ちするのにこれ以上の理由が見つからないほどだ。先の理由とも絡んで、実体はともかくも、アルトワ伯お抱えの政商を預かる会頭として信頼も十分に見てとれるのだ。
 最後にもう一つ、彼がまだ十二歳の子供であるという点だった。イワシの油漬けという革命的な商品を世に送り出したにもかかわらず、有り体に言えば、子供のするお店屋さんのごっこ遊びとして舐められていたのである。利に聡い幾人かの商人はすぐに手を出してそれなりの利益をあげてはいたが、彼らは主に中小の商人達だった。中央の豪商たちの殆どは一過性のものとして放置したのである。彼らは加工場を建てて油漬けを作り、それを流通させて稼ぐ程度の利益よりも、戦列艦を受注するなり鉱山の開拓権を落札するなりした方がよほど儲かるのだ。
 時が経つにつれて情勢も変わってくるだろうが、今のところは微妙に安定が約束されているリシャールとラ・クラルテ商会なのだった。

 そうこうするうちに、今年最後のティワズの週が巡ってきた。今週は仕事納めでもある。
 油漬けの方はすぐに止められるにしても、塩油漬けの方は熟成があるので少し前から仕込む数量を搾っていた。面倒だが、冬場とは言え熟成は急に止まらないのである。
 今日などは雇っている人数の半分を片付けや大掃除にまわし、リシャールもゴーレムに力仕事をさせたり、建物や道具類の固定化に綻びが出ていないか確かめたりと、忙しく立ち働いていた。
 明日はゆっくりと休み、明後日はラ・ロシェールに向かう予定である。マルグリットら三人には一日かけて馬車で向かって貰い、リシャールはアーシャに乗って先に宿に入る予定だ。
「リシャール様、城館からオーギュスト様が見えられてますわ」
「はい、わかりました。
 ヴァレリーさん、すみませんがお茶の用意をお願いできますか?」
「はい、すぐに」
 このあたりはさすが元メイドである。
 リシャールも言われてから初めて気付いたのだが、これまでは茶杯などもリシャールが作った身内用の無地のものしかなかったのだ。今は客用の少し上等な物や、日持ちのする茶菓子なども取りそろえてある。
 リシャールも、もちろん元従者ではあるから出来ないわけではなかったが、来客への応対などはヴァレリーに頼ることも多かった。
「こんにちわ、オーギュストさん」
「ああ、リシャールさん。
 突然お伺いして申し訳ない」
 オーギュストは、いつものように軽くリシャールに会釈を返した。この頃は、リシャールもかなりオーギュストとの距離感がわかってきた。彼は役人らしく、人柄も真面目だった。
「いえ、お気遣い無く。
 ……何かありましたか?」
「先ほど侯爵様がこちらにお戻りになられまして、リシャールさんを召し出すようにとの仰せです」
「侯爵様が!?
 もちろんすぐにお伺いしましょう」
 年末と言うことで、休暇のために戻られたのかも知れない。とりあえず急がねばならないのは間違いないだろう。
「ええ、お願いします。
 私はここで待たせて貰っても?」
「もちろんです。
 着替えてきますので、少し時間を下さい」
「はい、リシャールさん」
 ほどなくして、城館を訪ねても問題ない程度の服装に着替えたリシャールは、後のことをマルグリットに託してオーギュストともに城館に向かった。距離も近いので、アーシャに乗っていくと云うようなことはない。
「リシャールさんは、侯爵様とは面識がおありなのでしたよね」
「はい、幾度か王都のお屋敷をお訪ねしたことがあります」
 リシャールも、ギーヴァルシュ侯に会うのは久しぶりになる。お墨付きの一件以来だった。







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