ゼロの使い魔 ハルケギニア南船北竜
第十三話「海岸の日々」




 北モレーで城館勤めの役人、オーギュストと落ち合ったリシャールは、村長の館から歩いて十五分ほどの海岸に案内された。断崖と言うほどではないが、少し傾斜のきつい岩場があった。
「ここの南半分です。
 まあ、北半分も誰が借りるという訳ではありませんから、必要ならまた手続きに来て下さい」
「ありがとうございます」
 オーギュストが差し出した証紙に、サインと印章を入れて返す。
「私が言うのも何ですが、こんな辺鄙なところで良いんですか?
 同じ金額でもっと良いところもありますでしょうに」
 杖のおかげか、オーギュストはリシャールに丁寧に接してくれていた。子供ではあるがそれなりの扱い、というところであろうか。
 リシャールはこの国を変えていこう、とまでは思わなかった。ただ自分の思うまま、礼を守ってきただけだ。気分の問題である。身分制度による貴族と平民との差よりも、目上、年上の相手につい譲ってしまうだけなのかもしれない。
 もちろん自分より身分も年も下だからと、平民の子供に酷いことをしたことなどない。横柄な大人相手にはちょっとかちんときて抵抗することもあったが、それでさえ対等な立場に立つか、理詰めで抗するようには心がけてはいる。そうでなくとも杖あるが故に譲られる事が多いので、十分以上に特権は享受していると自分では思っていた。
「鍛冶仕事もしますのでね、音でご近所に迷惑かけるのもやりにくいでしょう。
 それに、竜がいますから遠くてもあまり困りませんし……」
「なるほど、仰る通りです」
 頷くと、何かあれば城館に、と言い残してオーギュストは去っていった。

 とりあえず、作業場を兼ねた住居と竜舎を作らないといけない。ぐるりと見回して、場所は林の手前の海岸側にした。
 こちらにきて初めての海だったが、感慨深げに見ているだけのわけにもいかない。岩場に潮がついていないことを確認してから、岩場自体も少し削る感じで棒きれで地面に部屋割りを書いていく。
 作業場と寝床、それに保存庫があればいい。足りなければ後で追加してもいいから、最低限の作業で済ませることにする。
 次にアーシャの寝床である。アーシャの大きさと、前につくったアルトワの練兵場の寝床を思い出しながら、ドーム状の建物を造ることにした。アーシャに聞いてみながら、大きさを決める。
 そこまで進めるともうお昼だったので、朝、街に出たついでに買ってきた魚の揚げ物を二人で食べた。アーシャはもちろん足りないだろうが、あとで豚を飼いに行くことにする。豚と同じ量の魚とどちらがいいか聞いてみると、日替わりが良いとアーシャは答えた。魚の方が若干安くつくので、ちょっと助かったリシャールだった。

 人の食事が終わったので、空中散歩のついでに近くの農村まで行って豚を買う。割と大きな養豚場があったので、毎日買いに来ても大丈夫かと聞くと、笑顔で了承して貰えた。
 海岸にもどって実際の作業を開始する。錬金で簡単なバケツを作り、砂地に水を含ませてから錬金をかけて粘土に仕上げていく。これをゴーレムを作る要領で脚のついた壁に仕立てて半自律で歩行させ、必要な位置に歩かせて完成させていった。土台は先に作ってある。四隅の柱だけは、更に鉄へと錬金する。大体の壁が出来たところで窓と扉を修正し、軽く固定化をかけた。
 天井は少し斜めにして雨対策をしておく。こちらは薄い鉄の板にして固定化をかけ、その上でいくらかの重石を乗せて鍵型の楔で壁と密着させておいた。それぞれ不都合は出るだろうが、また直せばいい。ついでに分厚い発泡スチロールのマットを錬金して最低限の住居は出来た。
 アーシャの寝床は作業自体は単純であるが、大きさが大きさなだけに一仕事だった。同じように砂から粘土を作って角材状にし、日本でもよく見かけたドーム型テントのような交差をさせた三本の柱を組んで鉄骨に錬金、そのうちの一つを大きめにとって入り口にする。あとは外壁に沿って半自動で歩く板状の粘土ゴーレムモドキを配置しては、順番に錬金をかけていく作業を続けた。天井のあたりになるとアーシャにも手伝って貰う羽目になって、ちょっと口惜しかったのは内緒だ。
 最後に固定化をかけてこちらは完成となった。自分の住居の方は未完成だが、とりあえず雨露がしのげるのでよしとする。この時期なら、極端に寒いこともないだろうし、帆布やマントもあるから大丈夫だろう。
 その日、久々に魔力を限界近くまで使ったリシャールは早々に寝ることにした。伝家の宝刀とも言える発泡スチロールの寝床に寝転がる。これは卑怯なほどに暖かいのだ。

 翌日、日の出の少し後に起きたリシャールは、海岸を歩いていた。思ったよりも遠浅のようで、かなり向こうまで潮が引いていたのだ。
 食べられそうなもので目を引いたのは小魚、カニ、ワカメ、海苔だった。潮だまりの小魚やカニは素早くてつかまえられなかったが、ワカメは採ってきた。海苔は醤油とご飯がないとくやしいので諦めることにした。打ち上げられていた昆布もあったので、これも良さそうなものだけ拾っておく。
 それから作りかけの小屋に戻って、昨日作った鉄のバケツ一杯に採ってきたワカメと昆布を、軒に吊して陰干しにしておいた。多少塩味がきつくなるかもしれないが、しばらく放っておけば乾燥ワカメと出汁昆布が出来るだろう。そう言えばと元の職場の配置を思い出しながら、塩蔵のワカメもあったなと思い出す。しかし塩をつくるのが面倒なのでやめておいた。
 それからアーシャにお願いして街まで塩や追加の油、蝋燭などの生活用品を買い出しに行ったり、作業場や物置、イワシを入れる壷を作ったりしてその日は終わった。

 翌日から実作業にはいることにする。北モレーの村長宅に声をかけて荷物を引き取り、海岸の家と往復した。
 ついでに漁師と交渉して捕れたばかりのイワシをバケツに一杯、五スゥを支払って譲って貰った。思ったよりも安い。ついでに漬けて一月ぐらいの塩漬けもあると言うことで、こちらはバケツ一杯に十スゥを支払った。
 ここからが大変だった。何しろ大量のイワシを三枚に下ろして行かなくてはならないのだ。塩漬けの方は鮮度が落ちることもないので翌日に回して、生のイワシを捌いていく。
 最初はナイフを使っていたが、割と手間取るので困った。途中でふと思いついて指でやってみると、少し身は崩れたがこの方が早かった。慣れてくると身の方も綺麗に取れるようになってきたので満足して作業を終える。
 割と血塗れになっていたので海と何度か往復して捌いた身を洗い、漬け物を漬ける要領で塩を振りかけてバケツに漬けていく。
 このあたりまではアーシャも見ていたのだが、飽きたのか昼寝をしてしまった。ごめんと思いながらもリシャールは時間勝負の作業を続けた。

 次に買ってきた方の塩漬けイワシも同じように捌いていった。流石に身を取るのが楽だった。こちらも一旦海水で洗ったが、つける前に問題があった。濡れたままでは漬け込めなかったのである。
 砂浜を石や鉄に錬金して干そうかとも考えたが、下手に乾かすとくっつきそうだったのでやめておいた。泣く泣く寝床の帆布を取ってきてその上で干すことにした。今晩から暫く、魚臭い生活になりそうだった。
 煮干しのことも考えると、大きな網か何かが必要になるだろう。必要とは言え、結構痛い出費になりそうだ。

 ここまで終えて、どうしたものかと多量に余ったイワシの頭と骨を見てみるが、ふと骨せんべいを作ってみようと考えた。
 竈に火をおこし、手鍋に少量のオリーブ油を入れて熱くなったところで、頭を取ったイワシを何匹か入れてみる。残った身がカリカリになると取り出してまた次を入れた。味見をしてみると、そのままでは塩味が足りなかったが、カリカリとして美味かった。これを何度か繰り返して椀一杯の骨せんべいが出来上がった。
 アーシャを呼んで、味見してもらうついでに買ってきた服に着替えさせてもみた。着方はわかるというので本人任せで暫く待つと、清楚な感じがしてなかなかによい美人が出来上がった。もっとも、素材がいいからなあとため息もつく。
 骨せんべいは好評のようで、あっというまになくなってしまった。

 そうこうするうちに、干していた塩蔵イワシが粗方乾いたので、ゴミなどが付いていないか確かめながらオリーブ油を入れた壷に入れていく。何かあったときのために、壷は小振りなもの三つにしてわけておいた。
 次に浅く漬けていたイワシの方も頃合いとみて、一度海水で洗ってから、今度は乾かさずに錬金した大鍋にオリーブ油をそそいぎ、粒胡椒やローレルとともに低温でゆっくりと熱する。熱と油で余分な水分を飛ばせるので乾かさなくて良いはずだった。確か高温じゃなかったよなと思いながら、何度かつまみ食いをしてそれらしい味に近づいたところで、レビテーションで用意していた壷に熱いまま移し替え、小さな穴を開けた蓋をして物置に寝かせた。
 魔法はあまり使わなかったが、体力と神経はすり減っていた。リシャールは半分寝ぼけた頭でアーシャに乗って豚を買いに行ったあたりまでは憶えていた。

 次の日は煮干しに挑戦であるが、リシャールはもう敷物をしばらくは魚専用にするかと諦めた。川に晒して洗うか、それでもだめなら儲かってからまた買うことにすればいい。
 翌朝、またも村に出向いて今度はバケツ一杯ではなく、村長に交渉して約二百五十リーブル、大体で豚一頭と同程度の重さの魚を買う。直接買うと一人の漁師だけが儲かりすぎてしまうので、もめ事の種になりかねないからと村長を通したのだ。二エキュー分の出費になったが豚よりはかなり安い。あとでアーシャに聞いてみたところ、アジか何かのイワシよりも少々大きい魚が美味だったと言うことだ。
 それでもそのうちからバケツ一杯分のイワシを煮干しにまわして朝から作業をする。今度は比較的楽だった。何せ、一々捌かなくてもいい。
 昨日作った鍋に、オリーブ油の代わりに海水を入れて入れて煮立たせ、沸騰したところにイワシを入れて、五分ほどたったところで少量ずつ木椀ですくいながら、日の強い場所に置いた敷物の上に重ならないように並べていく。小さな網かザルが欲しかったが、そんなものはないので仕方ないのだ。本格的な作業をすることになった時には、道具類のことも少し考えておこうと心の中にメモしておく。
 干す合間に、今度は鍛冶師の準備もする。金床や作業用の竈も造った。錬金鍛冶師であるリシャールにとっては絶対に必要な物、というわけではないのだが、あれば作業効率と魔力消費の面で圧倒的に楽なのだ。
 時々煮干しをひっくり返したりしながら、その日は過ごしたが、煮干しが乾ききらなかったので翌日も干すことになってしまった。

 その後半月ほどは、昼はイワシで夜は鍛冶屋と、のんびりなのか忙しいのかよくわからないままに過ぎていった。その間、特に気を付けたのは、保存食と言うことで衛生管理である。壷は外も内も焼いた後に一度海水を湧かしてから干すようにしたし、蓋なども同様に念を入れて消毒した。
 また、アーシャも村人には慣れたのか、人の姿で連れて歩いても割と大丈夫だった。時々知らないことがあった時なども、リシャールにきちんと尋ねてくる。最近は寝るときや移動時以外は人の姿だった。ずっと人の姿でいて苦しくないのかと聞いてみたが、特に問題はないそうだ。

 そうこうしているうちにこちらへ来て二十日ほどが過ぎたので、そろそろ戻る準備をしなくてはならないと思い出す。約束の日は定めていなかったが、丁度良い頃合いだろう。
 海岸での生活は苦しいことも多かったが、それ以上に前に進んでいるという実感もあった。気の持ちようは、アーシャにずいぶんと助けられた気がするリシャールだった
 結局、王都のギルドに戻って配達の仕事を請け負ったりはしなかったので、残金はもう三十エキューほどに減っていた。
 特に、錬金鍛冶につかう炭の出費が痛かった。煮炊きの方は枯れ木や流木を拾ってやりくりしていたが、求める火力が違うために仕方がないのだ。予想外の消費量に、いくらか作業を諦めたほどだった。追加で漬け込んでいた塩油漬けも、こちらは経済的理由が主だが、後半は休み休み作っていた。王都までの荷馬車を借りるのに五エキューほどはかかるだろうから、これはかなり厳しいと言わざるを得ない。
 その代わり、売り物としてはアンチョビもどきの壷が大八個、小六個、オイルサーディンが大七個、小六個、煮干しが麻袋に六つとそれなりの陣容を誇っていた。ついでに干した昆布とワカメも麻袋に一つづつである。最初に漬け込んだ分は試食したので残っていない。こちらもほぼ思った通りの味に仕上がっていた。
 錬金鍛冶師の方は中型のナイフが八本に片手剣が四本と、冗談半分に鍛えてみた大降りの両手剣が一本である。

 久しぶりにギルドに顔を出して、王都までの荷馬車を借りる算段を立てる。これが片道二日の六エキューとのことで、半金払って手配をする。
 リシャールは、前世の店長時代から値引き交渉は余りしない方だった。高いなら高いで、こちらの無理を通したりする方を選んだ。このあたりは報酬とサービスの関係を知っている元現代人ならではの感覚かも知れなかった。
 ついでに工匠組合と城館の方にも顔を出し、挨拶を済ませる。オーギュストに建物は潰していった方がいいのか尋ねると、貸借期限の月末までは手を着けないし、その後もそのままで特に問題ないとの返事だったので、小物だけ処分するか埋めるかしていくことに決めた。

 翌日、荷馬車に来てもらって壷と袋、剣を積んでいく。かなり荷台が余ったが、仕方がない。大きい壷と言っても一抱えもあるようなものではなかったから、このあたりなのだ。小分けした試食用の壷と袋、ナイフだけは別にしておくのも忘れない。壷に固定化がかけられているかも確認した。
 御者には心付けを渡して、先に行っているので王都では魅惑の妖精亭を尋ねてくれるようにと頼んでおいた。
 荷馬車を見送った後、北モレーの村長に挨拶し、アーシャがお世話になった養豚場でも最後の一頭を分けて貰って、王都を目指すことにした。
 あとは王都での立ち回り次第になる。

 もちろん、何の問題もなく王都にはたどり着いた。途中で潮臭いのに気付いて川で水浴びと洗濯をして、天気も良いのに魔法で服を乾かしたりだのとちょっとしたことはあったが、まあいいだろう。
 アーシャには今度は甘いお菓子が食べたいと言われたので、タルトか何かを探すと約束しておいた。

 竜牧場にアーシャを預けて代金を払うと、いよいよ手持ちは十エキューを切った。ナイフを一緒に持ってきたのはこのためである。売って資金の足しにするのだ。
 壷やら何やら持ち歩くのもおっくうなので、先に魅惑の妖精亭に行って部屋を取る。荷物が多いので小さめの一人部屋にして貰って六十スゥを支払った。ジェシカやスカロンにも声を掛け、食材を幾つか持ってきたのであとで試食をお願いしたいと頼んでおいて店を後にした。
 その後、やはり人に聞きながら繁華街から裏通りに入り、先日とは違う武器屋に持ち込む。こちらの店はかなり大きく、裏通りと言っても立地も良いようだった。だが先の店はデルフリンガーに会えたこともあり、あれはあれで良かったと思うことにしておく。
「ほう、いい出来だ。バランスも悪くない」
「ありがとうございます」
 ナイフの方は、先日と違って刃渡り十八サントほどにしたせいもあり、固定化、硬化の呪文付きで八本が六十エキューになった。実際、連続して数もこなしたので腕は上がっていると自負していたから評価が上がって嬉しい限りである。剣も明日到着するというと、是非見てみたいと言われた。
 こちらとしても願ったり叶ったりなので、再びの来店を約束して店を出る。
 そのまま繁華街の方に出て、今度は試食に使うパンやハム、野菜を購入して魅惑の妖精亭に戻った。

 実際、祖父達に食べさせる前にきちんとした料理として仕上げておく必要はあったのだ。盛りつけなどは料理人の手を借りるにしても、基本の味付けなどはやはり自分で行わなくてはならない。
 夜遅く、店の客足が引けてくる頃合いを見計らって厨房を借りるべく階下に降りる。スカロンと料理人の許可を貰い、邪魔にならないように食材を取り出した。
 まずは煮干しの頭と腹を取り除いて出汁を取る準備をする。借りた鍋にも水を張って竈にかけておいた。昆布の方も同様に準備して、煮込み用の野菜やハムなどを切っていく。
 次にアンチョビもどきを使ったサラダのソースを用意したが、こちらは楽に終わった。
 パンに生野菜とアンチョビまたはオイルサーディンをのせたメインの方も数を準備するが、食感から厚みを考えながら切ったりして、余計な時間を食うことになった。 
 それらを終えてそろそろいいかと出汁の方を味見して、出しがらを取り出した後に両方を合わせ、切った野菜とハムを放り込む。
 これが煮えるのを待つ間に煮干しを網焼きして、軽いツマミのように盛りつけておいた。
 見ていた料理人が驚くほどの手際だったが、実はリシャールは大したことはしていない。前世で伊達に一人暮らしが長かったり、スーパーマーケットに勤めていたわけではないのだ。居酒屋のアルバイトをしていたこともあるから、尚更だ。

「あ、おいしい」
「んんー、トレビアン!」
 試食は好評のうちに終わった。
 作ったメニューはアンチョビもどきソースのかかったサラダ、煮干しと昆布の野菜スープ、アンチョビとオイルサーディンの総菜パン、軽く炙った煮干しである。
 リシャール自身もこれなら大丈夫だろうとは思ったが、やはり反応が見られるのは嬉しい。用意した料理はすぐになくなってしまった。
「リシャールちゃん、これならうちのお店でも充分に出せるわ」
「ありがとうございます、ミ・マドモワゼル。
 本格的に仕入れられるのはもうしばらく後になると思うので、その時は優先して持ってきますよ」
「是非よろしくね」
「もちろんです」
 このまま店で出してもらえるのなら、良い宣伝にもなって一石二鳥である。
 あとは、ギーヴァルシュ侯を唸らせることが出来ればよいのだ。

 翌朝、残った食材を使い方を教えた上で料理の研究用にとジェシカにプレゼントして、魅惑の妖精亭を後にした。
 とりあえず、木いちごのタルトを買ってアーシャに差し入れ、もう一泊分の代金を支払った後、祖父の屋敷を訪ねてイワシの加工品が完成し、今日明日中に荷馬車が到着すると報告した。荷馬車一台分ぐらいの荷ならそのまま伯爵邸に置いても良いと云われたので、屋敷の倉庫を借りて済ませることにした。ついでに、リシャール自身も当然こっちに泊まるのだぞと決められた。
 祖父の話によるとギーヴァルシュ侯爵も楽しみにしているとのことで、荷が着き次第連絡を入れるようにと催促されていたのだそうだ。

 リシャールとラ・クラルテ商会の今後を占う大一番だ。
 ここは本気で頑張ろうと、リシャールは気を入れて荷馬車の到着を待っていた。







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