ゼロの使い魔 ハルケギニア南船北竜
第六十三話「歓待」前日のアルフィオン号見学でいささか気分が高揚していたリシャールだったが、今日は園遊会の開幕とあって、気を引き締めなおした。桟橋に整列して王家の方々をお出迎えをする『お仕事』があるのだ。 ラ・ヴァリエール家の宿営地は、朝から大わらわである。前日までに出来うる限りの準備は整えられていても、やはり当日ともなれば忙しくなる。 リシャールはヴァレリーに一言告げて、主賓に先んじて到着していた諸侯や法衣貴族が集う一角に向かった。 大桟橋には、その手前に若干広く取られた式典会場のようなものが設えられ、各国貴顕の到着とその歓迎に過不足のない対応がなされるようになっていた。軍務や国務などで翌日以降の参集になる者も多いので、トリステイン全ての上級貴族が集まっているわけではなかったが、それでも年始を祝う王城の園遊会のように着飾った数多くの人々が群をなしていた。一部他国の貴族も混じっているが、まだ数は少ない。先遣隊などはともかく、国外から招かれる客は自らの王や国主らと相前後して到着する場合が多いし、会期中ずっと滞在することも希だった。 結婚式の招待客など僅かにリシャールの知った顔もあったが、失礼でない程度の軽い挨拶に留める。代理で来たどこかの子供と勘違いされたのか、父上はご壮健かなどと聞かれたりもした。 「申し上げます。 畏くもマリアンヌ王后陛下並びにアンリエッタ姫殿下の座乗されたる御召艦『ラ・レアル・ド・トリステイン』号は、間もなくラグドリアン湖畔へと到着の予定であります」 先触れの騎士でも到着したのか、係の小者が会場内に告げ回っている。若干の緊張が会場内を走るが、整列はフネが見えてからでも良いのか、未だに雑談をしている者も多い。 リシャールは余り目立つのもなあと、式典係の従者に案内された位置から動かず、ただじっと待っていた。両隣は見知らぬ人物であったので、会釈こそしたものの会話にまでは至らない。少々退屈だが、親しい人物とでもなければこのような場であれこれと無駄話を出来るものでもなかった。 退屈ついでに外を見やれば、アルフィオン号をはじめ各国艦艇が列を組んでいる。艦籍も級種もばらばらだが、それなりに秩序が保たれているのか、列を乱す様子もない。ほぼ全てのフネが登舷礼の準備を終えているようで、白い水平服を着た乗組員が、艦列と同じく整然と並んでいる。 その中で一隻だけ、砲門を開いて砲口を射撃位置にまで突きだしている艦があった。トリステイン空海軍総旗艦『メルカトール』号である。艦列の先頭に位置しているこの艦のみが、『ラ・レアル・ド・トリステイン』に向けて礼砲を放つ役目を負っていた。もちろん、空海軍の自国王室への敬意を表して放たれるものだ。 しばらくして、艦列の向こうに装飾も煌びやかなフネがあらわれた。人々の列からもざわめきが止む。それを見計らったかのように、メルカトール号の砲口から白煙が立ち上ったのが見え、間をおいて遠雷のような発砲音が等間隔で聞こえてきた。空砲ではあるが、堂々たる戦列艦から砲煙が上がるのは迫力のある光景で、自国の軍艦であるメルカトール号が誇らしく見える。 リシャールもひとしきり見ほれていたが、周囲の人間に倣って姿勢を正し、『ラ・レアル・ド・トリステイン』の到着を待ちかまえた。 『ラ・レアル・ド・トリステイン』号は、それほど大きなフネではない。 全長は六十メイル強で、リシャールが見学したアルフィオン号よりも一回りか二回り大きい程度だ。平素は空海軍の艦隊に配備されており、等級としては二等戦列艦に分類される。御召艦任務に就く場合は砲を半分降ろして空いた場所に貴賓室を設け、主帆もトリステイン王家の白百合の紋章が描かれたものに取り替えるなど、相応の艤装が施されることになっていた。 当然ながら乗組員の練度は高いようで、腕の見せ所とばかりに桟橋の指定位置へぴたりと艦体が寄せられ、リシャールを感心させた。 行き足が止まったと見るや桟橋からはすかさず渡し板が用意され、するすると赤絨毯が敷かれる。 「トリステイン王国王后マリアンヌ陛下、王女アンリエッタ殿下のおなーりー!」 大音声の口上が会場の隅々にまで行き渡り、リシャールも膝をついた。 「一同揃っての出迎え、大儀です。 面を上げなさい」 しんとした会場に王后マリアンヌの声が響く。 顔を上げると、マリアンヌの後ろに控えるように、公爵一家やマザリーニら閣僚、その他の大貴族の姿があった。これでは、声を掛けることもできない。 「さ、皆様楽になさって。 わたくしの誕生祝いに集まって下さいましたこと、心より感謝いたしますわ。 園遊会は難しい話を抜きにして、大いに楽しんでいって下さいましね」 マリアンヌは柔らかい口調で挨拶を済ませると、王女らを伴ってその場を後にした。 リシャールはマリアンヌの短い挨拶を、園遊会の政治的色合いを薄めさせる意図をもった発言なのか、それとも別の理由があるのかと、少々疑問に思いながらも、王家の二人に同行している義父らにどうやって接触しようかと考えるのだった。 リシャールは結局、王家宿営地に指定されていた城まで足を運び、普通に取り次いで貰うことにした。特によい案も浮かばなかったし、端から無視をされることもないだろう。ソールズベリー伯から受け取った伝言の件もある。 待つことしばし、指揮官らしき人物が現れてリシャールを城内へと招き入れてくれた。二十代だろう若さながらも、見事な髭を蓄えている。 「初めましてになるね。 僕は魔法衛士隊グリフォン隊の隊長、ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルドだ。よろしく、セルフィーユ子爵。 君の結婚式も招待状を貰っていたのだが、生憎任務のため国外へと派遣されていたのでね、その節は失礼をした」 彼のことは、リシャールも名前だけは聞き知っていた。ラ・ヴァリエールの隣にあるワルド子爵家の当主で、義妹ルイズの仮の婚約者であると聞いていたからだ。 「こちらこそよろしくお願いします、リシャール・ド・セルフィーユです。 ワルド子爵殿のことは、ラ・ヴァリエール公爵様より度々お伺いしております」 彼は両親が早くに亡くなったこともあり、十六の若さで領地を継いだのだと公爵夫妻からは聞かされている。その事で、度々引き合いに出されるのだ。但しリシャールとは違い、彼は父母の代から仕える家臣に領地の一切を任せていた。 代わりに彼は王都へと乗り込み、切磋琢磨の結果、風のスクウェア・メイジにして魔法衛士隊の隊長という、義母カリーヌと同じくリシャールが束になっても敵いそうにない非凡なメイジになった。風のスクウェアの強さは、十分身に染みている。 「セルフィーユ子爵、君は十四と聞いていたが……」 「はい、そうですが……?」 ワルド子爵は気になることでもあるのか、リシャールをじっと見ていた。 「……いや、気にしなくてもいい。 さあ、案内しよう」 なんだろうなと思いながらも、リシャールはワルド子爵の後を大人しくついていった。 リシャールは控えの間に義父を呼んで貰って挨拶を交わし、ソールズベリー伯からの伝言を伝えた。 「ふむ、なれば私だけでもそちらへ向かうか。 ……カリーヌらは、王后陛下や姫殿下と昔話に花を咲かせておるからな。 男一人、無粋な真似をするのもどうかと黙り込んでおったところだ」 肩をすくめる公爵に、地位や名誉に伴うものとはまた別の苦労があったらしいと察し、リシャールは黙って頷いた。 「それからワルド子爵、久しいな」 「ご無沙汰しております、公爵閣下」 公爵とワルド子爵は、旧知の間柄らしい簡潔な挨拶を交わした。 「そこなリシャールとは挨拶ぐらいは交わしたと思うが、カトレアの婿でな。 機会があればよくしてやって欲しい。 ……ああ、貴殿も王都にばかり居らず、たまには我が家まで遊びに来い。 娘も喜ぼう」 「ありがとうございます、公爵閣下」 「では急ぐので失礼するぞ。 リシャール」 「はい。 ワルド子爵殿、ご案内ありがとうございました」 「うむ、君も元気でな」 「はい、では」 リシャールはワルド子爵に一礼し、公爵に続いて王家の宿営地を後にした。 用意して貰った馬車まで歩きながら、こちらへ来てからの話などをする。 「ほう、アルビオンの宿営地に出向いて新鋭艦の見学も済ませたのか」 「はい、先遣団の副団長殿が気さくに誘って下さいまして……勝手をして申し訳ありません。 しかし、実に見事なフネでした」 「構わぬ。それも一つの務めであるからな。 それに、当家はフネを持たぬし今後も持つつもりはないが、お主はそのつもりであろう? いくらか参考になったのではないか?」 「ええ、出来れば欲しいところです。 あのような立派な軍艦までは必要ないですが、小さいもので構わないので定期航路に用いたいとは思っています」 フネではなく水上船をセルフィーユ・リール間に最低限一隻、将来的にはセルフィーユ・ハーフェン間にもう一隻を就航させたいところだった。 セルジュの手配する鉱石運搬船が定期便と言えなくもなかったが、リールに寄るとは限らず、セルフィーユへの寄港が二週間からひと月に一度では、ついでに便乗することは出来ても製鉄関連以外の物流に大きく影響することはなかった。セルフィーユ船籍で唯一の外洋船であるベルヴィール号はそれこそ船長の判断で近海航路を自由に行き来しているから、利益こそ船腹以上にもたらされているものの、こちらもセルフィーユへの影響力そのものは大きくない。 「でも、しばらくは大砲に専念したいところなので、こちらはもう少し先になりそうです」 「む、もう大砲の製造に着手し始めたのか?」 「いえ、注文した機械が届くのを待っているところです。 来月……ニイドの月の月末ぐらいには最初の試作品が出来そうだと、担当の技師が申しておりました。 量産はまだ暫く先になると思います」 「ふむ、期待しておるぞ。 トリステイン国防の一助となれるよう努力せよ」 「はい、公爵様」 「……先年来、他国の政情不安をよく耳にするからな、我が国だけが安穏としていられよう筈もない。 この園遊会、存外勝負所ではないかとわしは見ておる」 義父は珍しく鋭い目でリシャールを見た。 「言うまでもなかろうがな、何も始祖が眉を顰めそうな政治的なやり取りばかりが外交ではないのだ。 お主がアルビオン艦に招待され、それを受けたように、礼節と親愛を交わすこともまた無視しえるものではない」 「はい、公爵様」 「そしてな、『トリステインは他国との戦争を望まず、他国同士の戦争も望まず』との基本方針が、昨日の御前会議でも再確認されておる。 ……国庫にせよ軍備にせよ、現在の我が国は戦が出来るような状態ではないのだ。ふん、わしが見てさえ鳥の骨が哀れに見えるほどだわ。 それに今はもう、『英雄王』フィリップ三世陛下の御代のように、杖で以て他国との関係をどうこうという時代でもない。もっとも、あの方は政治や経済は苦手であられたようだが……。 お主も心せよ、リシャール」 リシャールは息を飲みこんでから、神妙に頷いた。 望まざる公務に、また一つ重石が載せられてしまったようである。 ラ・ヴァリエールの宿営地に到着すると、公爵はソールズベリー伯を迎える準備を指示し、リシャールは使者としてアルビオン側へと赴いた。昨日の今日であるためか、歩哨にも顔を覚えられていたので素早く取り次いで貰えたのは幸いだった。 「ほう、では公爵閣下は宿営地へとお入りになられたのですな?」 「はい、昨日の不在をお詫びするとともに、閣下のご来訪を心よりお待ち申し上げる、とのことです」 「うむ、早速お伺いすることにいたそう。 セルフィーユ子爵も使者のお役目、ご苦労であられた」 「お心遣い、感謝いたします」 ソールズベリー伯とはほぼ型通りと言って良いやり取りが交わされ、リシャールは早々に役目を終えてアルビオンの宿営地を辞した。 戻って公爵に顛末を報告すると、入れ替わるようにソールズベリー伯が来訪し、あとはやることもなくなってしまったリシャールである。 今日に関しては、大きな公式行事はトリステイン王家の歓迎ぐらいでそれは既に終わってしまった。夜はと言えば、王家の主催ではない小さな夜会が各所で幾つか開かれるぐらいである。 翌日からは各国王族の歓送迎と、日を分けて行われる王家主催の夜会や舞踏会が大きな行事として控え、リシャール個人に関わるものといえば、公爵が主催する食事会や夜会などもあった。ただ、主催は公爵家であるものの、リシャールは自身が組んだ予定を優先させても良いとのお墨付きを貰っている。 代わりにソールズベリー伯爵が公爵の元を辞した後、リシャールは課題を一つ頂戴していた。 「幸いにしてソールズベリー伯らアルビオン側は、リシャールに比較的好印象を持っているようである。 これを最大限に活用し、トリステインとアルビオンの更なる融和をはかれ」 無理難題ではないが、アルビオンを歓待せよとラ・ヴァリエール家に対して下されている命にも、公爵より先ほど聞かされた国の基本方針にも関わる、大事な課題であった。 この件に関しては、宿営地に持ち込まれている公爵家の資産と家臣の使用さえ許可されており、リシャールとしても気を引き締めざるを得ない。 何が出来るか、まずはそれから考えよう。 リシャールは与えられた部屋で頭を捻った。……捻ったが、手持ちの札で使えそうなものは一枚きりだった。 それを主軸に、色々と知恵を働かせてみる。連想ゲームとまでは言わないが、似たような作業だった。何回か下書きや計算を重ねてから、内容を清書しておく。 午後も少々遅くなった頃、大凡の段取りを決めたリシャールは、来客の切れた合間を見計らって公爵の元を訪れた。 「公爵様、色々考えましたが、一旦王都へ行って参ります。 明日の大夜会までにはこちらへと戻る予定ですが、よろしいでしょうか?」 「む、何か思いついたようだな?」 「はい、まずは食によるおもてなしをしようと考えました」 「……ああ、あのイワシか。あれは確かに美味かったな。 海のないアルビオンのこと、さぞや歓迎されよう」 ふむなるほどと、公爵は頷いた。先ほどまとめた段取りや予算の概略を書き付けた紙を見せたが、特に問題はないらしい。 「いまならば日の落ちる前に王都に着けますから、早ければ明後日には荷が届くと思います」 「許可しよう。その件は任せる」 「はい、では早速出立いたします」 リシャールは言葉通りすぐに出発し、ラグドリアン湖を背に真っ直ぐ王都へと向かった。 日暮れぎりぎりに王都へと着いたリシャールは、自家の別邸へと降り立った。乗用馬車を用意させると、戻り次第手紙を領地に届けたいので伝書フクロウを手配しておくようにと言い含め、デルマー商会の王都支店へと向かう。 「お久しぶりでございます、リシャール様」 「こんばんは、ヴァランタン殿。 店も閉めようかという時刻に押し掛けて、申し訳ないです」 応対に現れたヴァランタンに、リシャールは早速話を振ってみた。 「ヴァランタン殿、少々無理を聞いていただきたいのです」 「何かお急ぎでありましょうか?」 「ええ、お察しの通りです。 申し訳ないのですが……こちらの王都支店にあって、なおかつ売約済みでないイワシの油漬けと塩油漬け、そして干物。 これらを全て、当家で押さえさせていただきたいのです」 ヴァランタンも、少々驚いた顔をリシャールに見せた。リシャールが作っていた頃よりも、ギーヴァルシュの加工場は拡張されて生産力も上がっていたから、相当な量になる。 「ヴァランタン殿、今、ラグドリアン湖で王家主催の園遊会が開催されていることはご存じですか?」 「ええ、もちろんです。 当商会も最上級の小麦を納入させて戴いております」 流石、大手の穀物商だった。もしかするとアルトワ伯あたりが絡んでいるのかも知れない。 「それでですね、私の義父であるラ・ヴァリエール公爵がアルビオン王国からいらっしゃるお客様の歓待を仰せつかっておりまして、私もその一端を担っているのですが……。 油漬けはトリステイン国内でもそれなりの人気商品となっていますから、アルビオンのお客様にも楽しんでいただけるものと考えております。 出来得れば、アルビオンからお越しの皆様全員に食していただくつもりです」 「それはまた、えらく大きなお話でございますな」 「ええ。 今のところ、アルビオンからお越しになられているのは先遣団の皆様だけですが、乗って来られたフネの水兵までを合わせれば、最終的には千数百人ほどの大人数になりますね」 「水兵にまで? リシャール様、お待ち下さい。 差し出がましいことを申すようであうが、流石にそこまでは……」 豪商の王都支店長ともなれば、それこそ取引上の接待を数限りなくこなしてきているはずだった。言うなれば、ヴァランタンは接待の専門家である。その彼には、少々行き過ぎたものに思えたようだ。 園遊会の歓待役として要求されているのは、あくまでも貴族相手の歓待だ。確かにその為に必要な金額までを考えれば一見無駄なようにも見えるが、リシャールはそのまま話を続けた。 「少し、考えたことがあるのです」 「ほう?」 「まずは園遊会の場、それ自体のことです。 随行の兵士にまで気を配ることで、歓待役の度量が大きいことを見せられます。 貴族は貴族同士で、また、士官達は他国の士官とも交流の場がありますから、話の種に美味しい油漬けを食べた等という会話もしてくれるでしょう。 そして園遊会の終わった後ですが……貴族はもちろん、士官も水兵も、母国に油漬けを食べた話を持ち帰ります。 特に水兵は人数が多いですから、市井のかなりの範囲にまで噂が広まるでしょうね。 それはそのままトリステインの評判になりますが、値段を考えればこれはずいぶんと安い投資です。 この市井の評判というものが割と無視できない……というのは、私よりもヴァランタン殿の方がよくご存じの筈です」 「ええ、それはもう」 ヴァランタンは重々しく頷いた。 「それに、いつもお世話になっているシモン殿やヴァランタン殿へのお礼になるかどうか、微妙なところなのですが……」 「はい?」 「もしかするとこれを弾みにして、アルビオンへの販路が大きく拡大出来るかもしれませんよ?」 リシャールは急かしたりする手前、少しだけ取引に色を付けておこうかと、ヴァランタンにそんな話を振ってみた。 リシャールはヴァランタンの全面的な協力を取り付け、更にはギーヴァルシュで製造される今後一週間分ほどの商品を、全てラグドリアン湖畔に直送して貰う契約を交わして別邸へと戻った。同時に使う小麦や食用油、玉葱などの野菜まで含めたデルマー商会への支払額は大きな金額になったが、それでも急ぎの運び賃などを考慮して公爵に示していた予算を下回っていたので、荷が届いてから揉めるようなことにはならないだろう。 マルグリットには、無理をしなくても良いが油漬けの増産をすすめること、ラ・クラルテ村の生け簀に新鮮な魚を用意しておくこと、商会の店舗に置いてある武器類の在庫のうちから半分ほどを王都で売り払い、現金を用意してリシャールの手元に届けることを頼んだ。更にはカトレア宛にも、ラグドリアン湖の様子などを書いた一通用意する。 それらを伝書フクロウに任せると、リシャールの一日はやっと終わりを告げた。明日からは更に忙しくなるかも知れないが、無事に乗り切りたいものである。 園遊会の初日だというのに、王都の別邸でベッドに入る自分にいくらかの面白みを感じながら、彼は眠りについた。 ←PREV INDEX NEXT→ |