ゼロの使い魔 ハルケギニア南船北竜
第五十話「誓約」年も開けてブリミル歴六二三九年、ウルの月フレイヤの週、虚無の曜日。現代日本風に言えば元日に当たるこの日、リシャールは、王家主催の年始祝賀会へ出席するためトリスタニアに来ていた。 六二三八年最後の日の昨日、王都到着直後に行われたマザリーニとの交渉は上手く行った。……と言うよりも貸しを作られたとか、最初からお見通しであったという風であり、ともかくもその場は無事に乗り切ることが出来た。後からまた何か無理を押しつけられるかも知れないが、それはそれと割り切るしかない。 フロランは、既にラ・ロシェールの家族の元へと送り出したし、ヴァレリーに任せた『亜人斬り』の売買と乗用馬車の買い付けも無事に済んだ。 今日はラ・ヴァリエール公爵のところへ挨拶に向かい、そのまま泊まって翌日の祝賀会に出席する予定となっている。懐の隠しには、昨日マザリーニに返済した物の他にも額面一万エキューの小切手が三枚入っていた。 今、荷馬車も含めて四台に増えた馬車は、車列を作ってラ・ヴァリエール公爵家の王都別邸へと向かっている。 「やはり、王都は活気が違いますわね」 ヴァレリーが珍しそうに、窓の外を見ている。 通りには、年始の祝いにでも繰り出すのか、市民が大勢浮かれていた。地方では、どちらかというと親しい友人を招いて自宅で祝うことの方が多いが、こちらでは店などに集まったりする方が主流であるようだ。魅惑の妖精亭も昨日に引き続き忙しいようだったし、ジェシカもスカロンも張り切っていた。 「僕も祝賀会よりは、町中に繰り出す方が気楽でいいんですけどね……」 「うふふ、去年は楽しかったですわ」 「ええ、ラ・ロシェールも賑やかでしたね」 去年はギーヴァルシュにいたから、社員旅行のようにして、皆でラ・ロシェールまで遊びに行ったのだ。 しかし、公爵家の別邸はいつ見ても別邸とは思えないほど大きいなと、リシャールは少し先の街区からでも充分に目立つ屋敷を視界の隅に認めながら、義父らと会うのを楽しみにしていた。 だが、何かおかしい。 いつものように門をくぐって案内されたのだが、心なしか、活気と緊張がメイドや従者達の間を走っているような気がしたのだ。リシャールは一再ならずここを訪れているし、元従者としても違和感を感じる部分があった。 誰か身分の高い客でも来ているのかもしれないなと、少し身構えておく。 しかし、答えはすぐに与えられた。屋敷の緊張の原因は、客ではなかったのだ。 「リシャール!」 「カ、カトレア!?」 居るはずのない婚約者が、満面の笑顔で彼を迎えてくれた。 「え、どうして王都に? 身体の方は大丈夫なの!?」 「無理をしなければ大丈夫よ」 「ならいいんだけど……本当に、無理は駄目だよ? 疲れる前に休んで、昼寝もして、それから……」 ちゅ、と唇を塞がれる。 「大丈夫、あなたの言うことはちゃんと聞くわ」 「ならいいけど……」 「リシャールだって、無理はだめよ? あなたもまだ、決して大人ではないのだから」 「うん」 もう一度、今度はリシャールの方から唇を合わせる。 「カトレア、また前よりも美人になってる」 「うふふ、そうかしら? あら、リシャールも背が伸びたわね」 「うん、そうかも」 「……ゴホン」 「「あ……」」 憮然とした様子の義理の両親。 こめかみに青筋を立てた義姉。 心底呆れた様子の、それでも少々顔の赤くなっている義妹。 山場を迎えた恋愛劇を見ているかのような、熱い視線を向けてくるメイド達。 もちろんここは、ラ・ヴァリエール公爵家王都別邸の玄関ホールだった。 「せ、先日振りです、皆様方!」 「……うちの娘をなによりも大事に思ってくれている事だけは間違いないようだな、リシャール・ド・セルフィーユ男爵?」 「二人とも、逢えて嬉しいのは判りますが、もう少しまわりをよく見なさい」 恥ずかしいのか、カトレアはリシャールの胸に顔を埋めたまま固まっていた。 この状況は、どうしたものだろうか。 リシャールは、弁解しようという気力も削がれていた。 その後、嫌味、嫌味なのね、あてつけなのねとエレオノールから頬を引っ張られつつ、ルイズには生暖かいのに妙に温度が低い視線を向けられ、リシャールは腕にカトレアをぶら下げたままお茶の用意の調った応接間へと案内された。 「……あー、それでリシャールよ、招待状や式など全てこちらで調えて準備万端であるが、お主の方からは何か希望はないか?」 「はい?」 リシャールには、何の事やらさっぱりであった。 「リシャール、私たちの結婚式の事よ?」 「え!?」 隣に座るカトレアは嬉しそうだったが、もちろんリシャールは聞いていない。その事に気付いたのか、カトレアは父親に向き直った。 「あの、お父様。 ……リシャールとは、詳しいお話しをされていないのですか?」 「む? そう言えば、連絡も何もしていなかったかもしれんな。 ……まあいい、少々早くなるだけのことだ、万事任せよ。 結婚式に於ける花婿など、花嫁の添え物と相場は決まっておる。 ……そうであろう?」 「え、ええ、もちろん」 公爵もしまったという顔をしていたが、リシャールは当然それどころではなかった。カトレアとの結婚には異存はないが、迎え入れる準備が未だ不十分なのだ。 だがしかし、いい機会かも知れない。下手に理由を付けて先延ばしするよりは、余程いいだろう。日本と違って、男性十八歳以上女性十六歳以上などと言う規定もない。 そして何より、隣に座ったカトレアが嬉しそうなので、何も言えなかった。 リシャールは気持ち立て直して聞いてみた。 「それで、式の方はいつごろに予定されていますか?」 「明後日だ」 「へ!?」 頭が真っ白になった。流石に、それはないと思う。 「お父様たちがね、お披露目のために素敵な衣装を用意して下さったのよ。 楽しみにしていてね、リシャール」 「え、あ、うん……」 ハルケギニアでは、二人でカタログを見て一緒にウエディングドレスや式場や新婚旅行先を選ぶというわけではないだろうから、きっとこういうものなのだろう。 それに、親同士親族同士が話を進めて、当人が式まで顔を合わせないことすら、決して珍しい話ではないとも聞く。 うん、そうに違いあるまい。 だが、頭を切り換えて現実に戻すと、急がねばならないこともあった。 セルフィーユでは、誰もこのことを知らないのだ。 「ヴァレリーさん!」 リシャールは後ろを向いて、付き従っているはずの筆頭侍女に声を掛けた。だがそこに、ヴァレリーの姿はない。 「ヴァレリー殿ならば、伝書フクロウを借りに行くと仰って先ほど出て行かれましたが……」 律儀に答える公爵家筆頭執事に、リシャールは気をそがれた。 彼女の職務にも大きく関わることだったし、リシャールが動けるわけもないく、ここは彼女に任せるしかない。 それにしてもと、リシャールは我に返った。 婚約の時と言い、どうしてこうも自分の意見は反映されないのだろう。 割と思い通りに好き勝手している領地のことは棚に上げて、少しだけ哀しいリシャールだった。 翌日はラ・ヴァリエール家の馬車に便乗させてもらい、王宮へと赴くことになった。 公爵家任せの結婚式の方はともかくも、城を預かる者としてその後のことには色々と準備が必要なヴァレリーは、馬車を連れて市街へと向かったのだ。リシャールとカトレアよりも先に、彼女が竜籠でセルフィーユへと戻る予定まで組んである。 「リシャールよ、祝賀会への招待は初めてであったな?」 「はい」 リシャールは、話があると言われて公爵夫妻の馬車に同乗していた。ルイズとエレオノールは別の馬車、カトレアは禊ぎなど、式の準備があるのでお留守番である。 「……ふむ、とりあえずわしか、お主の祖父殿あたりにくっついておればよかろうか。 面倒臭くなるほど、知り合いは居らぬのだろう?」 「はい、叙爵の時にお会いした方々ぐらいかと思います」 「そうですわね」 相手の顔を覚えきれるかなと、自分に対して疑問を抱くリシャールを乗せた馬車は、王宮の門をくぐっていった。 祝賀会はリシャールが最初思っていたよりも、かなりくだけたものだった。 いや、格式も各所に設けられた会場も来場の貴顕も特上ではあったし、それなりの緊張はした。 最初の入場こそ、会場から聞こえる『○○(爵位)家△△殿御入来』などというそれらしい呼び出しに身構えたが、特に式次第もなく、遅刻自由、退出自由の上、参加者が一堂に会しての乾杯や挨拶などもなく、それぞれがそれぞれに過ごしていたのだ。 叙爵の儀式に比べれば、何と言うことはないものだなと、リシャールはルイズと共に公爵夫妻らの後ろに付き従っていた。エレオノールはアカデミーの同輩らしき女性と共に、とっくにどこかへ行ってしまっている。 「はぁ、退屈だわ」 「私は初めてなので……」 ルイズはもちろん何度も来ているからだろう、最初の三十分ほどでもう飽きてきたらしかった。確かに子供には退屈だろうなとは、リシャールも思う。 そのリシャールの方は、早々に祖父らと挨拶を交わして小切手を受け取って貰い、一息ついていた。 もっとも、祖父らは小切手など眼中になく、結婚式のことで頭が一杯のようだ。肩を叩かれ、頭を撫でられ大いに祝福して貰った。 それにしても公爵夫妻は、流石に挨拶される人数も桁違いである。諸侯の中でも重鎮と呼ばれるだけの実力と家柄というのは、これ程のものなのかと圧倒される。もちろん彼も義理の息子とのことで、おまけのようにして挨拶のご相伴に預かっていた。 「ねえリシャール、わたし休憩したいわ。 エスコートしてちょうだい」 リシャールが紹介された軍人と挨拶を交わしていた間、両親の許可が得られたのだろう。ルイズに引っ張られて、会場を抜け出ることになった。 「姫様ともっとお話出来るかと思ったのだけれど、無理みたいね」 「流石にお忙しいようですね」 当然ながら、アンリエッタ姫は列を作って挨拶に来る貴族と次々と挨拶を交わしていた。アイドルの握手会よりは幾らかまし、というあたりか。お気の毒だなとは思うが、これも一つの義務なのだろう。 それでも僅かな時間ではあったが挨拶を交わしたときに、明日の結婚式は『公務』なので出席は無理だが、明後日二人で王宮を訪ねてくるようにと、お言葉を頂戴した。ここで言う『公務』とは、王家の姫君が一臣下の結婚式に列席していては、様々な問題があるための方便であることはリシャールにもわかっていた。我も我もと貴族全員がご臨席を賜っていては、本当の公務すら出来なくなってしまう。 会場を出たリシャールは、控えの間を一つ借りてソファにルイズを休ませ、彼も椅子に座って少しのんびりさせて貰うことにした。人いきれは、やはり疲れるのだ。見本市会場で社長の鞄持ちをしながら歩いてまわり、取引先の偉いさんに次々と紹介されるような感覚であるような、そうでないような……。 「起きないか、二人とも」 気が付けば、二人ともに居眠りをしていたらしく、祝賀会は既に終わっていた。 公爵夫妻も、少々呆れていたようである。 だが、公爵家別邸に戻ってからも、気の休まる暇もなかった。翌日の確認である。 式自体は、宣誓ぐらいしかすることはなかったが、夕刻から行われるお披露目の方は、添え物であるにしては少々忙しいようであった。 「まずは招待客の家格と席次を頭に叩き込め。 なに、そのまま他の場面でも基本的には変わらぬ序列であるからな、後で役にも立とう」 自ら挨拶に行かねばならない相手やその順番などを、公爵が自らを講師にして頭に叩き込んでくれた。一応、筆頭執事のジェローム氏が側に控えてくれるようではあったが、それでもいい加減な真似をするわけにもいかなかったので、リシャールは懸命に憶えた。 夜半には解放されたが、疲労困憊である。 「式の時まで憶えていられるかな……」 カトレアと逢う暇さえないが、これを乗り越えればいいのだと自分に言い聞かせて、リシャールは眠りについた。 明けて翌日、いよいよ結婚式の当日である。 今自分が寝泊まりしているのも公爵家なら、結婚式の準備から何から全て取り仕切ったのも公爵家で、何やら申し訳ない感じが今更ながらにしてきたがそれでどうなるわけでもなく、リシャールはヴァレリーや公爵家のメイド達にされるがままになっていた。連れてきた二人はヴァレリーの代理として、兵士らと共に今日も王都を駆けずり回って、カトレアの受け入れに必要な品を集めているらしい。夕刻には半分程の人数を、荷物と共にセルフィーユへ送り出すそうだ。 「はい、これで宜しいかと」 「凛々しゅうございますわ、リシャール様」 カトレアの方は大わらわであったろうが、リシャールの方は生地こそ上質だがいつもの正装と余り代わり映えのない礼服に、公爵から借りた恐ろしく大きな宝石のついた宝飾杖と、決まりきった姿であった。支度もヴァレリーの他に二人のメイドがついているだけである。白いタキシードじゃないんだなあと、余計なことを考えてみたりするリシャールだった。 「リシャール様、そろそろ馬車の方へお願いいたします」 玄関へ向かうと、手前の馬車の中に一瞬だけカトレアの姿が見える。しかし声を掛ける暇もなく、リシャールは別の馬車に乗せられた。帰りは同じ馬車になるが、行きはまだ夫婦ではないので、このような手間がかけられる。 公爵家の別邸をトリスタニア大聖堂へと向けて出発する馬車の数は、従者達のものまで含めて十数台。一方の当事者であるリシャール自身が呆れる程の規模だった。 いや、公爵家の令嬢を嫁にすると決めた時点で、こうなることは決まっていたのだろう。 今更だったが、えらいことになったものだとリシャールは思った。 大聖堂に到着後は、控えの間に通されて新郎担当の司祭から諸注意と式次第を確認され、あとは呼び出しを待っていた。わずかに洩れ聞こえてくる喧噪は、これすべてリシャール達の結婚を祝う招待客である筈だ。公爵は当然のようにトリスタニア大聖堂を丸ごと借り切っていたから、他に客は居ない。 「緊張してるんだ?」 「うん、少しね」 リシャールの付き人には、クロードが自ら立候補してくれた。年回りから言っても妥当な線であったが、新郎が余りに若すぎるので、少々目立つかも知れない。カトレアには当然、ルイズがついている。 「僕の結婚式でもリシャールに付いて欲しいけど、ちょっと無理そうだね」 「クロードが学院に入る前に結婚するなら、喜んで立候補させてもらうよ?」 「あはは、それはちょっと難しいかな」 付き人は十五、六歳前後までの、新郎新婦と比較的関係の深い少年少女と相場が決まっている。特に年頃の少女達には大人気の役どころであり、時には親が前面に出て議論になるほどのものであった。 「そういえばリシャールのお嫁さんって、どんな人なんだい? 僕はまだ会ってないんだよ」 「そうだなあ、まず優しい人かな。 それから……」 「失礼いたします、お時間でございます」 入ってきた助祭が時間を告げ、リシャールとクロードは互いの顔を見合わせてから、頷いた。 「よし、行こうか」 「うん。 続きは後で聞くよ」 リシャールとクロードは、礼拝堂へと向かった。 深呼吸を一つしてから賛美歌の流れる礼拝堂の新郎側の入り口に立ち、クロードに先導されて中へと歩き出す。反対側にある新婦側の入り口からは、もちろんルイズに手を引かれたカトレアが同じように入ってきた。彼女の方は白を基調としたドレスである。 あちらは大丈夫かなとカトレアの様子を見ようとしたが、花嫁のベールに隠されて、表情はよく見えなかった。 ちらりと見ると、相当な広さを誇るはずの信徒席はほぼ満杯。大半はラ・ヴァリエール側の招待客であろうが、ルメルシェ将軍や、父の友人で王軍竜騎士隊教官のルブリなどの姿も見えて、少なからずリシャールを喜ばせた。 やがて祭壇へと貫かれた中央の廊下に出て新婦達と向き合う形になると、クロードとルイズは一歩下がり、リシャールは腕を差し出し、カトレアの手がそこに添えられる。 ここからは付き人二人を従えて、ゆっくりと祭壇に歩み寄るのだ。 「おお、なんと美しい花嫁だ」 「お綺麗だわ」 「素敵なドレスね……」 歩を進める間に、参列者からはカトレアに対する賞賛の声が聞こえる。鼻が高いというわけでは決してないが、嬉しいことは嬉しい。 しかし……。 「あれが噂の『鉄剣』殿か、だが……」 「おい、若すぎないか?」 「こ、子供!?」 自分に対する評価が聞こえてくると、リシャールはちょっとがっかりした。いや、数日後に誕生日を迎えてもまだ十四なのであるから、仕方のないことと自分でも思うが、やはり少しくやしい。それでも、数年もすればそのような声も聞こえなくなるだろうと聞き流す。 目の前に祭壇が迫ったところで、リシャールとカトレアは足を止めた。クロードとルイズはそれぞれに確保されている、祭壇に一番近い特等席へとつく。 目の前の老人が司教杖を掲げ、会場は静寂に包まれた。リシャールも会うのは初めてだが、彼がトリステイン中のブリミル教聖職者全てを束ねる、トリスタニア大司教であろう。 彼は二人を、そして礼拝堂内を見渡してから、厳かに告げた。 「これより、式を執り行う」 彼は恐ろしく分厚い教典に手を当て、再び司教杖を掲げた。 長々としたブリミル教の聖句と、結婚についての故事や約束事が頭を垂れる二人へと投げかけられる。 古今東西あまり違いはないらしいなと、リシャールは思った。偉い人に式を任せるほど長くなるのも同じ様だった。 やがてそれも終わり、大司教は聖印を切ってから改めて二人の名を口にした。いよいよだ。 「新郎たる男爵リシャール・ド・セルフィーユよ、汝は始祖ブリミルの名に於いて、生涯このものを敬い、愛し、そして妻とすることを誓うか?」 「誓います」 「新婦たるラ・ヴァリエール公爵が次女カトレア・イヴェット・ラ・ボーム・ル・ブラン・ド・『ラ・ヴァリエール』よ、汝は始祖ブリミルの名に於いて、生涯このものを敬い、愛し、そして夫とすることを誓うか?」 「誓います」 「では、誓約の口づけを」 リシャールはカトレアのヴェールに軽く手を掛けた。 カトレアは微笑と共に、僅かに涙を浮かべていた。 嬉し涙とは言え、また泣かせてしまったらしい。 それでも彼女は息を飲むほど美しかった。 彼女が目を閉じたのにあわせて、キスをする。 彼女を屈ませることも、自分が背伸びすることもなく。 唇が合わさった。 「ここに神聖なる誓いは交わされた。 二人の門出に、始祖ブリミルの祝福あれ!」 大司教の宣言とともに、聖堂内が拍手と祝いの言葉で埋め尽くされた。 リシャールの腕に添えられたカトレアの手にも、ぎゅっとちからが入る。 「これからもよろしく、カトレア」 「はい、あなた」 二人はもう一度、口づけを交わした。 ←PREV INDEX NEXT→ |