ゼロの使い魔 ハルケギニア南船北竜
第十話「魅惑の妖精亭」武器屋を出たリシャールは、繁華街の中でも飲食店がある方へと引き返した。アーシャへのお土産を探さないといけないのだ。少し遅いが、昼食も取りたかった。 流石にトリスタニアは王都だけあって店の数も多いし、品物の種類も豊富だ。海からは遠いのでこれは仕方がないのだが、新鮮な海産物を除けば大抵の物はあった。 但し、リシャールが知らないだけで新鮮な海産物を扱っている店も存在するし、取引も日常的に行われていた。貴族向けの超高級店とその卸業者だ。これには水のメイジが活躍する。雇われた水のメイジは取れたばかりの新鮮な魚介類に氷結の魔法をかけ、竜籠やフネを使ってトリスタニアにそれらを持ち込み、高額な利益を得る。もっとも、道中で氷が溶けないように幾度も追加で魔法をかけないと売り物が傷むことになるので、冬場は多少楽になるにしても、それなりに大変ではあった。 リシャールはいくつかの店を冷やかしてからそのうちの一軒でミートパイを注文し、それを待つ間に自分はパンと野菜のシチューを頼んで平らげた。アルトワでは食べたことのない一風変わった味付けだったが、なかなかいい味だった。ミートパイを持ってきた店員をつかまえて聞くと、南部ガリアの方の味付けだという。リシャールは、この店は憶えておこうと思いながら、アーシャのいる竜騎士隊の駐屯地に戻った。 「きゅるるるー」 「おいしい?」 「きゅー!」 差し出したミートパイをご機嫌で食べるアーシャに、リシャールの顔も緩む。リシャールも一切れだけ食べてみたが、これも美味しかった。ミートパイはあっと言う間になくなった。 「きゅ……」 「ああうん、また何か買ってくるからね」 「きゅ」 リシャールも用事が幾つかあったので、そうそうアーシャの側にいられないのがちょっと残念だったが、仕方がなかった。まさか連れて歩くわけにもいかない。注目の的とかそういうのをすっ飛ばして、衛兵が走ってくるだろう。グリフォンやマンティコアに騎乗した王宮の魔法衛士隊等が来たら、街中で怪獣大決戦になりかねない。 しかし、と思考を切り替える。 ここにいつまでもお世話になるわけにもいかない。早々に手だてを考えないといけなかった。とりあえず、明日はトリスタニアのギルドにでも行って、竜を預かってくれる場所か施設を探そうと思った。 しばらくアーシャとじゃれていたが、次兄との約束に間に合わなくなりそうだったので、セギュール伯の屋敷に向かうことにする。ジャンは、わざわざ朝と同じ通用口の所で待っていてくれた。 ジャンは長兄と同じく、父クリスチャンのように細面だったが、体つきは祖父ニコラのようにがっしりとしていた。兄達は父方の、リシャールは母方の血をそれぞれ色濃く受け継いだらしいとエルランジェ伯に会って確信した。但し魔法については逆で、父方の土系統をリシャールが、母方の水系統は兄達が受け継いでいた。火や風でないあたり遺伝は関係しているのだと思われたが、ご先祖にいないとも限らないし、調べるほどのことでもなかった。 「リシャール、思ったよりも早かったな」 「ごめんなさい、待たせてしまいましたか?」 「俺の方が予定より早く終わったからな、気にしないでいいよ。 よし、早速だが行くか」 「はい、兄上」 朝には話しきれなかった家族のことやアルトワの伯爵様ご一家のことなどを話しながら、兄に連れられて繁華街の方に向かった。 「ここだ、リシャール」 「『魅惑の妖精亭』?」 リシャールが連れて行かれたのは、洒落た看板に小綺麗な店構えの酒場だった。 「ああ、初陣も済んだそうだし、もう一人前だろ?」 「ええ、まあ」 「ここは美人も多いし料理も旨いんで、トリスタニアでも人気の店なんだ」 あー、と頷くリシャールだった。前にセヴランに連れて行かれたのが居酒屋なら、こちらはナイトクラブかラウンジになるだろうか。 「チップぐらいは自分で出せよ?」 「はい」 悪戯小僧のような笑顔をするジャンに、リシャールは相変わらずだなあと内心苦笑いして、魅惑の妖精亭の入り口をくぐった。 中に入って早速席に案内される。時間が早かったせいか、客の入りは三分というあたりだろうか。 「いらっしゃいませ、ご注文をどうぞ」 二十歳ぐらいの栗色の髪の美人が注文を取ってくれた。衣装はこちらの世界に来て初めて見るほどの、割と際どい衣装だった。記憶も薄れつつあったが、お水のお姉さんの雰囲気はどこでも変わりないようだ。 「ワインは瓶で、あとは、とりあえずお勧めを一皿づつ。 リシャールは何か食べたいものあるか?」 「いえ、特にはありませんが、アルトワで食べられない物なら何でも試してみたいです」 「それもそうだ。じゃあ……はしばみ草のサラダも追加で。 後は飲みながらその都度頼むことにするよ」 「はい、かしこまりました」 女の子の後ろ姿に視線を送りながら、ジャンは言った。 「な、良い店だろう?」 「はい」 リシャールも、男の子だった。 程なく運ばれてきたワインで乾杯する。ジャンの方には先ほどの栗色の美人が、リシャールの方には金髪ポニテのやはり美人がお酌してくれた。心なしか取って食われそうな気分にもなったが、気のせいと言うことにしておく。 「じゃあ、リシャールの初陣とこれからの商売繁盛を祈って、乾杯!」 「かんぱあい!」 「かんぱーい!」 「ありがとうございます」 ごくん。 室温より僅かに冷えていたワインは美味しかった。 「ええっと、君はたしかクロディーヌで……そっちの金髪の子は初めてだったかな?」 「あらあ、名前憶えててくださったのかしら、嬉しいわ」 「あたしはソフィーです、これからもご贔屓に」 「ああ、そっちは俺の自慢の弟、リシャールだ。 トリスタニアに住んでるわけじゃないんでそうそう連れてくるわけにもいかないけど、来たときはサービスしてやってくれよ? リシャール、これも一つの勉強だ。 お前も流石にこういうところは初めてだろ? 慣れておいて損はないぞ」 兄上はこういう場に慣れすぎだと、心の中で突っ込んでおく。 その後、他愛もない話を女の子達も交えて盛り上がった後、席を立つクロディーヌにチップを渡す兄を見習って、リシャールも同じく五スゥをソフィーに手渡した。 「……意外と手慣れてるな」 「そんなわけないでしょう。 兄上の真似をしただけですよ?」 「いやそっちじゃなくて、女の子のあしらい方が」 「そうなんですか?」 日本で生きていた頃、本部勤務で営業させられていた頃は取引先の上役などを接待していたリシャールだったから、普通に飲んでお喋りするだけなら随分と気楽なのだった。女の子が場を盛り上げようとしてくれているのに乗っかるだけで良いのだ。 「相変わらず大したやつだよ、うちの弟は……。 ところで、よくそんな苦いの普通に食えるな」 「え、美味しいですよ?」 さきほど、兄からはお前が全部食えと言われたはしばみ草のサラダをつつきながら、辛口の日本酒か焼酎と合いそうだなと考えるリシャールだった。食感はシャキシャキとして水菜に近かったが、苦くても美味しいあたりは、沖縄のゴーヤーと共通するかも知れない。贅沢を言えば、ドレッシングではなく醤油と鰹節が欲しかった。 「あら、ジャンちゃんお久しぶり」 「おー、店長」 リシャールは、食べていたはしばみ草を吹きそうになった。目の前に、豪華なドレスを着たごついおっさんが立っていたからだ。 「店長、紹介しとくよ。うちの自慢の弟、リシャールだ」 「あら、かわいらしいこと。 わたくしはスカロンよ、これからもよろしくね、リシャールちゃん」 「は、はい、よろこんで!」 この場合の『よろこんで』は、居酒屋のあれである。 「元気もいいのね。 私のことはミ・マドモワゼルと呼んでね」 「は、はい、ミ・マドモワゼル」 「んんー、トレビアン!」 くねくね。 リシャールはスカロンに気に入られたようだ。 くねくね。 だが。 しばらく横に座られてお酌されるうちに、スカロンは見た目こそ強烈で腕力もちょっとあれだったが、実に話題豊かで頭の回転も速い、一流の接客能力の持ち主であることに気づいたリシャールだった。リシャールの横でくねくねしながらも、さりげなく店の女の子をつかまえて的確に指示を出していたりする。 上手く言えないが、気分的には前世であったような、何かの会合で他業種の店長と愚痴を言いあいながらも意気投合して楽しく飲めたといった感じに近かった。 ……見た目をのぞけば、だったが。 しばらくして。 「あら、ちょっと揉めちゃったみたいね。 私がいかなくちゃいけないわ。 代わりの女の子……ん、そうね。 ジェシカ!」 すぐに奥からリシャールと同い年ぐらいに見える、黒髪の少女がやってきた。服装はこの歳の少女にしては際どいと言えなくもなかったが、お店の他の女の子ほどではない。 「私の娘、ジェシカよ。 リシャールちゃんと同い年ぐらいだから話もあうでしょ?」 「こんばんわ、ジェシカです」 「あ、こんばんわ」 この歳で働かせて良いのかとリシャールは思ったが、わざわざ奥から呼ぶと言うことは、客を選んでいるのかも知れない。 さっさと行ってしまったスカロンを見送り、二人で顔を見合わせる。 微妙な空気が流れた。 ジャンも隣に座った女の子を口説く手を止めて、興味津々でこっちを見ている。助け船を出そうという気もないのだろう。にやにやしている。 「えーっと、どうぞ?」 とりあえず、空いた席にジェシカを座らせた。 微妙な緊張感。ジェシカも戸惑っているのだろうなとリシャールは思った。 「あー、もしかして……僕が同い年ぐらいだから逆に困ってる?」 「え、うん。 ……なんでわかったの?」 「僕もちょっと困ったから」 「そうなんだ」 二人でくすくすと笑う。 「普通に話せばいいかな」 「そうね、その方がいいみたい」 じゃあとワインに手を伸ばして、ジェシカが酌をしてくれた。 「「乾杯」」 チンとグラスを鳴らしてワインを開ける。 「ね、王都には遊びに来たの?」 「ううん、仕事」 「その歳で? リシャールは幾つなの?」 「十二だよ」 「じゃああたしの一つ上ね」 十一だったのかとため息が出る。しかし将来はこの店を背負って立つわけだし、そんなものなのかもしれない。リシャールだって、十からは給金を貰って働いていたのだ。家業を手伝うということなら、大差ない。 「ね、どんな仕事してるの?」 「行商人と鍛冶屋だよ。まだ始めたばかりだからね、これからどうなるかわからないけど」 「かけもちなんだ」 「うん」 壁を崩すと割と気さくなジェシカだった。リシャールとしては、普通に友達としてお喋りしている気楽さが心地良い。アーシャとは空中に限って友達のような感覚で話すことが出来たが、リシャールはやはりいいものであると思った。兄達やクロードはもちろん大事な人たちだが、親しくともやはり目上の相手ということで、意外と寂しい子供時代を送っていたんだなと煤けてしまうリシャールだった。 そのあとも、ジェシカと楽しく話を続けていった。ワインも進むが、ここは兄持ちと甘えることにした。 「そうだ、鍛冶屋さんならお鍋の修理とか出来る?」 「多分大丈夫だと思うけど、見てみないとわからないなあ」 「じゃ、こっちに来て」 厨房に引っ張られて行くリシャールに、ジャンが目ざとく声を掛けた。 「なんだ、二階に行くのはまだはやいぞ?」 「違います!」 話を聞いていた癖に、と思いながらもジェシカに手を引かれて厨房に向かった。 厨房は戦場だった。 料理人や下働きが右に左に走り回っている。 厨房で見せて貰った大きめの銅鍋は、長年使われていたようで底に穴が開いていている。微細なひびも多かった。 「これならすぐに修理出来ると思うよ」 「ほんと?」 「うん、そんなに時間もかからないと思う。 そうだジェシカ、酔いさましに水を一杯貰えるかな?」 「わかったわ」 それほど酔っているわけではないが、少しさっぱりしたかったのだ。水を待つ間に、修理すべき箇所を丹念に確かめていく。 「どうぞ?」 「うん、ありがと」 受け取った水を半分ほど飲み干してから、リシャールは腰の鉄杖を抜いた。 「あなた……貴族だったの!?」 「うーん、一応貴族にはなるのかなあ? けど、うちは領地を持ってるわけじゃないし、働かないと食べていけないよ?」 「そうなんだ」 「びっくりさせちゃったかな、ごめんね」 「ううん、いいけど……」 確かにこういうお店なら、酔った貴族が無茶を言ったりしてるんだろうなと思う。酷い貴族は本当に酷いのだ。いつか見た光景を頭から追い出しながら、リシャールは銅鍋に向きなおった。 先に大きな穴を塞ぐことにして、コップの水を少しずつ垂らして鍋と同じ系統の純銅を錬金しては変形させていく。 少し余計に盛り上げていくのがコツだ。鍋底の少し凹んだ部分にも水を垂らして、同じように銅を盛っていく。土から銅を錬金するよりも精神力の消費が大きいが、こういう作業の場合、水は水で使いやすいのだ。一滴二滴なら表面張力で盛り上がるし、少しこぼせば水平も取れる。このあたりの匙加減は、錬金鍛冶が専門ではないものの、家や伯爵家の鍋釜の修理を一手に引き受けていた父によって教えられていた。 一通り銅を盛り終えたので、今度はそれを鍋底全体に広げるようにしていく。厚みを持たせる事で強度を増やし、ついでに細かい亀裂も防いでいく。一通り終わると今度は裏返して同じ作業をし、ついでに痛んでいた取っ手も修理した。 固定化はかけない。これは、鍋や釜は刃物と違って常に熱を受け、日に何度も高温と低温にさらされるので、固定化で熱による膨張と収縮まで阻害されると酷いときには弾け飛んで割れるためだった。 「はい、できたよー」 「すごーい!」 「ついでだから、欠けた包丁とかもあるなら持ってきていいよ」 ジェシカが楽しそうなのでまあいいかと、他の物まで引き受けるリシャールだった。 「で、リシャール、お前は一体何をやってるんだ?」 「あ、兄上。えーっと、鍛冶屋さんです」 兄のことをすっかり忘れていたリシャールだった。 「俺はもう帰るけど、お前はどうする?」 「ここは宿屋も兼ねているそうなので、部屋を借りるつもりです。 こっちはもうちょっとかかりそうなんで」 「ふーん。まあ無理するなよ。 それから、トリスタニア出る前にはもう一度ぐらい顔見せろよ」 「はい」 兄は翌日のことが頭にあるのか、割と早い時間に帰っていった。いいかげんでお調子者の割には、真面目な兄だった。 リシャールはその後も厨房の隅で包丁や鍋の修理を続けていったが、色々と勉強にもなった。 欠けている包丁は、大きく折れていた一本を諦めてもらうことで、他の包丁の欠けた部分を補うことにした。これで材料を確保して魔力の消費を押さえることが出来たので、作業は楽に進んでいった。鉄鍋の補修にもこれを使い、足りない部分は水で補う。 続けて作業をしていて気づいたのは、一から作るのとは違ってかなり楽なことである。恐らく、欠けた部分を補う、もしくは元あったものに戻そうと意識するので、イメージが固まりやすい分魔力を通しやすいのだろうとリシャールは考えた。 調子よく錬金で修理して、刃物は固定化もついでにかけていく。 渡されたものの七割ほどの修理が終わったところで、スカロンに声を掛けられた。 「まあ、リシャールちゃんそんなにお仕事してくれたの?」 「え、まあついでですよ」 「悪いわねえ。 そうだわ、お礼にお部屋は無料にしておくから」 「え、いいんですか?」 「持ちつ持たれつよ。 賄いでよかったら食事もしていってね」 「ものすごく助かります」 王都に来てからは、宿に困らないリシャールだった。 とりあえず、店も終わったらしく、女の子達が片づけやら掃除やらに走り回っていた。厨房の方も一息ついて賄い料理の支度に入っている。リシャールが使っているテーブルも食卓にするというので、こちらも一旦店じまいすることにした。 ジェシカの隣に座って賄いのシチューをご馳走になることにする。 「いつのまにか、お客さんじゃなくなっちゃったみたいね」 「うん。でもこの方が気楽でいいよ。 さすがに十二歳だとちょっとね」 「それもそうよね」 先ほどと同じく、くすくすと笑う二人だった。 その日はとりあえず寝て、翌朝、いつもの時間に目覚めたリシャールだった。大して飲んだ訳でもなかったし、夜遅くまで魔法を使って何かしているのも毎度のことだったのでいつもと変わらない寝覚めだった。 階下に降りて厨房で仕込みをする料理人達に挨拶して、邪魔にならない場所を貸して貰うことにする。割と早い時間なのに、もうジェシカは厨房に入っていた。 「あら、おはよう。はやいのね」 「おはようジェシカ。……前はもっとはやかったよ?」 「……貴族なのに?」 疑わしげなジェシカに苦笑する。 「昨日も言ったけど、朝のんびりしてられるのは、領地持ってる人たちだけだよ」 「うーん、なにか違うのよね」 「何が?」 うちは庶民派だからかな、と考えてみる。一応エルランジェ伯の孫でもあるけれどと心の中で付け加える。 「リシャールって貴族っぽいところもあるんだけど、あまり恐そうに見えないし、偉そうでもないからかな。 お店に来る貴族のお客は、みんな威張ってるわよ?」 「うちの兄上も?」 「あの人が貴族だっていうのは、貴方が杖を使うまで知らなかったわよ。 女好きの人としてはお店でも有名だったけど。 やさしいし、チップの払いもいいし、格好いいし、お店に出てる女の人たちにも人気あるわ。 みんなに優しいのがちょっと残念だけどね」 容赦ない批評にリシャールはちょっとがっくりとしたが、兄らしいと言えば兄らしいかと納得した。特権を振り回したりだのしていないところは、リシャールにも好ましく思えた。 「そうだ、これ食べてみてよ」 「スープ?」 「試作品なんだ」 薄い色をした半透明のスープに、野菜が入っている。 一口飲んでみた。さっぱりしていて割と美味しいが、少しコクが足りない気がする。 「どう?」 「美味しいけど、もうちょっとコクがある方がいい気がするかなあ」 こういう場合は正直に答えた方がいいかと、思ったことをそのまま口に出す。 「うーん、やっぱりかあ。 そうなのよね。 お肉を入れると重たくなりすぎてしまうし、入れないと薄いし……」 もう一口飲んでみる。出汁が足りていない味噌汁のような感じである。……出汁? そういえば、ブイヨンはあったような気がする。家でも時折食卓に出ていた。だが、出汁という考え方はこのハルケギニアでは、無いような気がする。間違っても鰹節はないだろうが、いりこや昆布はどうなのだろう。短なる乾物としてなら、売られている可能性はある。 「今すぐはちょっと無理かも知れないけど、僕も何か考えてみるよ」 「ありがと。 父さんに美味しいって言わせることが出来たら、お店で出すかも知れないからよろしくね」 これは、商売になるか。乾物や干物はハルケギニアにもあったが、出汁というのは余り知られていない概念なのか。 ちょっとやる気になったリシャールだった。 ←PREV INDEX NEXT→ |